研究課題/領域番号 |
16K09545
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
森本 浩之輔 長崎大学, 熱帯医学研究所, 准教授 (50346970)
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研究分担者 |
田中 健之 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (30432967)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | efferocytosis / 小胞体ストレス |
研究実績の概要 |
マウスマクロファージcell lineであるJ774を使用して、小胞体ストレスによるアポトーシス細胞クリアランスへの影響とそのメカニズムに関する研究を継続した。昨年度までにツニカマイシンが小胞体ストレスを誘導し、これがRhoAを活性化させアポトーシス細胞の貪食 を抑制していること、さらにはシャペロン(タウロウルソデオキシコール酸)によって回復すること、同様の現象がたばこ抽出液によっても起きることを確認した。タバコによって肺胞マクロファージに小胞体ストレスが生じること、これによるRhoAの活性化がタウロウルソデオキシオキシコール酸により改善したことから、喫煙による慢性肺疾患の治療に応用できる可能性がでてきた。また、小胞体ストレスがRhoAを活性化するメカニズムを明らかにするために、Sarubulinalを用いてマクロファージを刺激したところ 、あきらかなアポトーシス細胞の貪食抑制が容量依存性に観察され、これによりeIF2αがこの現象に重要な役割を担っている可能性が高まった。次にGSK2656157を加えて、ツニカマイシンによって抑制されたアポトーシス細胞貪食における影響を検討したところ、GSK2656157は容量依存性にこれを回復させた。また、ROCK活性においても、PERK阻害剤GSK2656157によってツニカマイシンによる亢進が抑制されたことから、小胞体ストレスによるRhoAの活性化はPERKを介しているものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
慢性呼吸器疾患とくに肺線維症の病因を追求することが最終的な目標であるため、小胞体ストレスが肺線維症に関与するTGFβや上皮間質形質転換(EMT)にどう関与するのかについて着手できていない。動物実験や臨床検体の検討について、プロトコールの作成まで行ったが細胞実験の検証に時間を要してしまい研究を実行できなかった。以上のことから、研究全体としてやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
細胞実験による研究では、eIF2αのノックダウン細胞を作成して、PERKの経路によりアポトーシス細胞の貪食が抑制されている ことを確認する。 さらには、マウスの肺胞マクロファージを用いて、同様にこれまでみられた現象の確認作業を進める。 また、これまでにHGFの産生抑制の機序をあきらかにしておらず、小胞体ストレスに特異的な翻訳の抑制や蛋白分解に着目して研究を進めたい。また、動物実験、臨床検体の収集を行い、マクロファージの小胞体ストレスが実際の呼吸器疾患においても重要であることを証明するための研究を遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
たばこ煙抽出液を作成して、PERK阻害剤でそのefferocytosisに対する影響を抑制できるかを検証する実験で、たばこ煙抽出液の濃度調整が難しく時間を要した。ほとんど研究費を要しない予備実験の段階で足踏みし、評価のためのELISAキットを購入するまで進まなかったこと。動物実験が行えなかったことなどが原因と考えられる。 次年度は、たばこ煙抽出液の濃度設定を完了してin vitroでの実験を終了させ、動物実験へと進む。動物実験ではまず、マウスの肺胞マクロファージを用いて、これまでと同様の実験を行う。さらにin vivoでの検証へと進みたいと考えている。このため試薬や消耗品に加え、ROCK活性ELISAキット、マウスの購入を行う。
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