研究実績の概要 |
ヘムオキシゲナーゼ-1(hemeoxygenase-1: HO-1)は32kDaのheat shock proteinであり,炎症,酸化ストレスに対し細胞保護的に作用する.これまでCOPDをはじめとして,珪肺症, 慢性緑膿菌感染症, 急性肺障害,間質性肺炎において, 病態を制御機構としての役割が示唆されている。これらの疾患や疾患モデルでは, 肺細胞におけるHO-1の発現が検討されているが,血清値の臨床意義は不明であり,また,測定法も確立されたものがなかった.今回,我々は,血清HO-1の測定法を新たに開発するとともに,COPD を含む各種呼吸器疾患におけるバイオマーカーとしての有用性について検証を行った. 血清HO-1の測定には,ImmnonoSetTM HO-1 (human), ELISA development set (Enzo, Farmingdale, NY) に改良を加えたassay bufferを用いたsandwich ELISA法を使用することで,従来の測定法よりも高感度に血清HO-1を検出することを可能にした.血清HO-1の喫煙者あるいはCOPD患者における検討では,非喫煙者,現喫煙者,COPD患者の順に血清HO-1は低値を示し,長期喫煙に伴うHO-1の肺細胞保護作用の減弱が示唆され, 喫煙者においては, 血清HO-1がCOPDの発症リスクを予測するバイオマーカーとなる可能性が示唆された.一方で,診断時血清HO-1に関して,ARDS患者では,生存患者に比べ,死亡患者において高値であり,経時的にも持続高値を示した.間質性肺炎急性増悪(AE-IP患者)においても同様に,安定期IP患者に比べて高値であり,生存患者に比べ死亡者で高値であった.したがって,血清HO-1は疾患活動性や予後予測のバイオマーカーとなる可能性が期待される.
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