研究課題
Induced pluripotent stem cells (iPSC)から作成された血管内皮細胞cell line (induced-endothelial cells , iEC)と肺性幹細胞(HPMSC)により作成される微小環境の解析の実験を行い現在下記の意義を見出した。1)iPSCが自然分化する過程で変化する脂質をmatrix-assisted laser desorption time of-flight imaging mass spectrometry (MALDI-IMS)の手法で明らかにした(Shimizu Y et al, Anal Bioanal Chem 2017 ; 409:1007-1016)。また、iPSCから血管内皮細胞を分化誘導した。Reverse-phase ultra-high-pressure liquid chromatography(UHPLC)の手法を用いて、血管内皮初期分化時の細胞内脂質と継代後のiPSCにおける血管内皮細胞の細胞内脂質は変化すること、すなわちplasmalogen type のphospholipidsが継代後に上昇することを見出した (Nakamura Y, Shimizu Y(corresponding) et al, Sci Rep 2017; 7:9377)。 血管内皮細胞においてplasmalogen typeのphospholipidsは細胞外からのストレス耐性に働くとの報告がある。これらの知見は、本研究のiECのネットワーク形成時の脂質解析をMALDI-IMSで行う際の基礎データとして有用と考えられた。2) MALDI-IMSで用いるindium tin oxide slide glass(ITO グラス)にマトリゲルをのせiECを播種しネットワーク形成を行いMALDI-IMS解析を行った。iECのネットワーク上に複数の異なる分布を示す(質量電荷比)m/zが検出された。 また同一のm/zでもネットワーク上の部位によりintensityが異なっていた。 iECネットワーク形成過程で部位により代謝が異なっている可能性を2次元的に可視化できる可能性が示唆された。 さらに同様の手法でITO glass上でiECネットワークとGFPでラベルしたHPMSC(GFP-HPMSC)のco-cultureを行った。 GFP-HPMSCはiECネットワークの分岐起始部や隣り合う分岐起始部を結ぶネット上に生着していた。現在同部位に対しMALDI-IMSの解析中である。
3: やや遅れている
iECによるネットワークとHPMSCのco-cultureを行っている。MALDI-IMSの解析に至適なiECネットワーク(iECの細胞数)とHPMSCの細胞数の比率を調整中である。今後MALDI-IMSで得られたm/zを示す物質を同定するためにUHPLCの併用が必要なためやや進捗は遅れている。
得られたm/zの同定のために、MALDI-IMSとUHPLC解析を組み合わせてデータベースと照合していく。UHPLC解析のためにマトリゲルを除去し細胞分離を行う。
ネットワーク形成におけるMALDI-IMS解析によって得られたデータが多いため、解析に時間がかかり、解析終了後に次の実験ステップへ進みたいため、新たな物品の購入を控えた。 また細胞などのco-cultureの至適条件検討などの探索に時間をかけたため新たな物品の購入を控えた。現在ネットワーク形成時のMALDI-IMSのデータ解析がほぼ終了した。co-cultureの実験ステップへ入っていくため今後試薬や物品など大幅な物品購入を予定している。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)
Scientific Reports
巻: Aug 24;7(1) ページ: 9377
10.1038/s41598-017-09980-x.