研究実績の概要 |
増悪・転移・治療効果と関連した免疫系細胞をフローサイトメーター(FACS)で解析し、さらに血清エクソソーム中のmicroRNA (miRNA)を次世代シークエンサーで測定し、その標的遺伝子をbioinformatics的手法により決定する。以上から肺癌における免疫障害を遺伝子レベルから解明することを目的とした。本研究の前提となる肺癌における腫瘍免疫の重要性を確認するために、病期III期およびIV期における根治症例の特徴を検討した(臨床研究14R-054)。転移を認めるIV期においても根治症例では腫瘍内に炎症性細胞の著しい浸潤を認め、その特徴を報告した。この結果を踏まえ、「肺癌における免疫系の機能障害の解明」(臨床研究17R-147)を前向きに行った。83症例230 pointにおける臨床情報と採血検体を取得し、FACSとmiRNAによる測定を行った。病期および組織型の違い、病状進行に伴う変化、健常人との差を検討し、FACSではリンパ球 (T cell、B cell、NK cell)の解析および腫瘍免疫で中心的な役割を果たすT cellの極性 (Th1, Th2, 制御性T細胞(Treg)、Cytotoxic T cell (Tcyt)、Helper T cell)と細胞表面マーカーを測定した。結果として、肺がんの進行に伴い、Tregの増加とTcytの減少が明らかとなった。細胞表面マーカーでは、肺がんの進行によりPD-1、PD-L1とCTLA-4の発現増加を認めた。以上より、肺癌進行時に免疫障害が明らかになった。その際のmiRNAの測定では、1000以上の発現解析を行い、癌において重要性が報告されているmiRNA以外にも新規分子を認め、そのアノテーションからion transport、development、differentiationに関与するpathwayが同定された。
|