研究課題/領域番号 |
16K09556
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
辻 隆夫 東京医科大学, 医学部, 兼任講師 (30459664)
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研究分担者 |
青柴 和徹 東京医科大学, 医学部, 教授 (60231776)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | COPD / 皮下脂肪 / 内臓脂肪 / やせ / 代謝異常 |
研究実績の概要 |
目的1:COPD では皮下脂肪量の減少によるエネルギー貯蔵能力の低下から異所性脂肪が蓄積しエネルギー代謝は非効率となり、やせにもかかわらず内臓脂肪蓄積や糖代謝異常を合併する、の本研究の根幹仮説の仮説のヒトにおける立証として、COPD症例と非COPD症例の皮下脂肪組織の脂肪細胞面積を検討した。COPD症例と非COPD症例の皮下脂肪組織の脂肪細胞面積は同様であった。一方、胸郭レベルのCT画像から算出した皮下脂肪量はCOPD症例は非COPD症例と比べ減少した。以上よりCOPD では皮下脂肪量の脂肪細胞数の減少によるエネルギー貯蔵能力の低下が推察された。
目的2:豚膵エラスターゼを経気道的に注入されたマウスの皮下脂肪量は投与1週後に減少し投与2週後に回復する。この投与1週後のマウスの皮下脂肪(減少時の皮下脂肪)と投与2週後のマウスの皮下脂肪(増加時の皮下脂肪)を各々対照群(生理食塩水の気道内投与1、2週後のマウス)の皮下脂肪と遺伝子発現を比較した。エラスターゼ投与1週後のマウスの皮下脂肪(減少時の皮下脂肪)ではEP3 receptor mRNA発現は増加し、エラスターゼ投与2週後のマウスの皮下脂肪(増加時の皮下脂肪)ではEP3 receptor mRNA発現は減少した。内臓脂肪では同様なEP3 receptor mRNA発現変動は認めなかった。EP3は脂肪組織において炎症に関与し脂肪分解抑制にシフトする作用をもち、カテコラミンによるcAMPを介した脂肪分解に対して拮抗する。このため、皮下脂肪改善を目的としたEP3発現を低下させる治療介入は内臓脂肪蓄積をきたさないと推察される。
目的3:テオフィリンの全身投与は皮下脂肪のみならず内臓脂肪にも脂肪細胞内cAMP上昇が誘導され内臓脂肪量の増加も懸念される。このためテオフィリン投与されたCOPD患者の内臓脂肪量を後ろ向き研究で検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的1:高脂肪食投与下の肺気腫モデルマウスにおいて、内臓脂肪蓄積や糖代謝異常を認めること、血管刺激物質の全身投与による皮下脂肪量の改善に伴い内臓脂肪蓄積や糖代謝異常が改善することを論文報告し本研究の根幹仮説を強固にし、ヒトにおける立証としてCOPD症例10例と非COPD症例10例の皮下脂肪組織の脂肪細胞面積の検討からCOPD では皮下脂肪量の脂肪細胞数の減少によるエネルギー貯蔵能力の低下が推察され、内臓脂肪蓄積や糖代謝異常に相関するか検討を進めており、目的1への達成度は順調に進展している。
目的2:エラスターゼ投与1週後のマウスの皮下脂肪(減少時の皮下脂肪)とエラスターゼ投与2週後のマウスの皮下脂肪(増加時の皮下脂肪)を各々対照群の皮下脂肪の遺伝子発現を比較し、減少時の皮下脂肪でEP3 receptor mRNA発現は増加し増加時の皮下脂肪でEP3 receptor mRNA発現は減少することを同定し、内臓脂肪では同様なEP3 receptor mRNA発現変動は認めないことから、COPDの皮下脂肪におけるEP3発現を低下させる治療介入により内臓脂肪蓄積をおこさず皮下脂肪減少を改善させることが示唆される。ヒト組織において非COPD症例に比べCOPD症例の皮下脂肪内にEP3発現上昇があれば、EP3発現を低下させる治療が介入しうる可能性があり検討を進めている。目的2への達成度は概ね順調に進展している。
目的3:目的2の検討によりEP3発現を低下させる治療介入が内臓脂肪蓄積をおこさずCOPDに認められる皮下脂肪減少を改善させることが示唆され目的3より優先して行っており、目的3の検討は未施行となっている。このため、達成度は十分とはいえない。
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今後の研究の推進方策 |
目的1:ヒトにおける立証として、COPD症例10例と非COPD症例10例の皮下脂肪組織の脂肪細胞面積を検討しCOPD では皮下脂肪量の脂肪細胞数の減少によるエネルギー貯蔵能力の低下が推察された。COPD症例で実際に皮下脂肪量の脂肪細胞数の減少によるエネルギー貯蔵能力の低下が内臓脂肪蓄積や糖代謝異常に相関するか検討を進める。
目的2:ヒト皮下脂肪組織において非COPD症例に比べCOPD症例と比べEP3発現上昇があれば、EP3発現を低下させる治療が介入しうる可能性がある。COPD症例10例と非COPD症例10例の皮下脂肪組織に対してEP3抗体を用い免疫染色を施行し皮下脂肪内にEP3発現を検討する。
目的3:テオフィリンの全身投与では皮下脂肪のみならず内臓脂肪にも脂肪細胞内cAMP上昇が誘導され皮下脂肪量の増加と同時に内臓脂肪量の増加が懸念される。これをテオフィリンを投与されているCOPD患者でのdataベースを用いた後ろ向き研究で実証して行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用計画中の最終年度使用分が低く設定してあったため。 次年度使用分と併せて組織切片の免疫染色試薬の購入等に使用。
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