研究実績の概要 |
特発性間質性肺炎(IIP)136名のうち家族性間質性肺炎(FIP)47名、孤発性特発性間質性肺炎(SIP)89名について臨床情報と末梢血DNAについて匿名化データベースを作成し、これまで明らかになっているサーフファクタント関連遺伝子(SP-C,ABC-A3)についてrare variantの有無をまずサンガー法で確認を行った。また、これら遺伝子のrare variantが同定されなかったFIP、診断時年齢が45歳以下のIIP、IIPの中でも希少間質性肺炎とされるPPFE (pleuraparenchymal fibroelastosis) については、次世代シークエンサーを用いた網羅的エクソーム解析を行った。以上の研究の結果で2018年度に明らかになった点は、以下の通りである。1) 家族性間質性肺炎では、57%(47名中27名)にrare variantを認め、その中で85%は、SP-A1,SP-A2, SP-C, ABC-A3遺伝子のサーファクタント関連遺伝子であった。一例は、テロメア関連遺伝子TERTのrare variantを有していた。2)PPFEについては、9症例を調べることができた。7症例は、rare variant を有し、残り2症例は、著しい低頻度のncRNAの変異を有していた。Rare variantを有した遺伝子は、細胞接着に関わる2つの遺伝子とテロメア関連のRTEL1遺伝子であった。3)Sporadic特発性間質性肺炎で診断時年齢45歳以下の若年発症症例では、RTEL1遺伝子のrare variantであった。以上の結果から家族性間質性肺炎のほとんどは、サーファクタント関連遺伝子変異が、またPPFEにおいては、テロメア関連遺伝子変異或いはその遺伝子の転写後制御に関わるRNA変異、細胞接着関連遺伝子が病態形成に関わっている可能性が示唆された。
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