研究課題/領域番号 |
16K09558
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
内海 裕文 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (00773855)
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研究分担者 |
原 弘道 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (70398791)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 尿中PGE-MUM / 肺癌 |
研究実績の概要 |
本年度は肺癌(腺癌)16例のPGE-MUM測定を行い、臨床像を検討した。まず背景については、年齢(歳)70±14歳、性(男/女)4/12、ステージ(Ⅰ/Ⅱ/Ⅲ/Ⅳ/再発)7/0/2/5/2、喫煙歴(有/無)8/8 Ⅰ期2/7、Ⅲ期2/2、Ⅳ期2/5、再発2/2、喫煙指数(BI)272±659であった。PGE-MUM(μg/g・Cr)は平均29.4±29.2(Ⅰ期19.4±13.4、Ⅲ期39.5±35.1、Ⅳ期43.1±24.3、再発20.5±6.0)と再発を除き、病期が進むにつれてPGE-MUMは増加する傾向であった。一方、従来の腫瘍マーカーであるCEA(ng/ml)は、平均19±78(Ⅰ期4.3±3.5、Ⅲ期83.4±222.5、Ⅳ期15.9±20.5、再発14.1±20.7)であった。PGE-MUMの値と治療との相関(化学療法)については、SD4例では51.6→23.1、18.4→17.4、22.2→20.2、33.4→20.6、PR1例(放射線療法併用)では、51.9→52.0であり、必ずしも治療効果と相関していなかった。手術症例は、いずれもⅠ期であり、PGE-MUMが低値であったが、術後に定期的に測定し、再発の有無との関連性についても検討する予定である。 また、腺癌以外の肺癌(小細胞がん、扁平上皮癌)でもPGE-MUMを測定したところ、高値を示したが、これらの肺癌では重喫煙者、COPD合併例が多く、背景肺の炎症を反映している可能性が高いと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PGE-MUMの臨床検体は順調に集積しており、また、病期と相関する傾向にあり、バイオマーカーとして有効である可能性が示唆された。PGE-MUMは喫煙、COPDでも増加するため、比較的喫煙歴が少ない症例群ではバイオマーカーとして有用である可能性がある。今後さらに症例を集積し、検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
PGE-MUMは肺腺癌の診断、病期の予測、治療の選択、治療効果、再発予測などに有用である可能性がある。一方で、性、喫煙、他の基礎疾患、内服薬などによって影響をうけるため、症例をより多く集積し、背景ごとに解析を行う予定である。 PGE2は、COX、PGESにより合成され、15-hydroxyprostaglandin dehydrogenase(15 –PGDH)により分解されるため、PGE2の増加は、COX-1、COX-2の発現増加、15-PGDHの発現低下のいずれによってもおこりうる。すなわち、PGE-MUMの値を評価する上では、PGE2の産生、分解に関わる酵素の発現を詳細に解析する必要がある。そこで、切除された肺癌組織のCOX-1、COX-2、15-PGDHの発現を検討し、PGE-MUMとの相関を検討し、PGE-MUM増減のメカニズムについても検討する。
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