研究課題
現在非小細胞早期肺癌は、臨床病期I期、II期および一部のIIIA期の非小細胞肺癌症例においては、標準的治療として手術が第一選択となる。Ⅰ期、特にIA期であっても術後化学療法が必要な予後不良群や不必要な予後良好群が存在し、正確に予測できる再発予測マーカーの同定が必要である。Ⅰ期肺癌における再発予測マーカーを構築し、さらに術後化学療法が必要な予後不良患者と不必要な予後良好患者を選択する治療選択マーカーを構築することを目的とした。目標は(A)認容性の高い固定パラフィン包埋(FFPE:formalin-fixed paraffin embedded)からのRNA抽出および遺伝子増幅システムの構築する。また同時に本院のRebiopsy bank project(倫理委員会承認済)において得られる新鮮凍結標本も同時に採取し質の高いRNAを採取しテクニカルコントロールとする。(B)術後化学療法群および経過観察群からなる300検体規模のFFPE標本で検証する必要がある。学習セット160例で検証し、さらにバリデーションセット160例で確証する。である。初年度はRNA抽出の最適化の検証と症例数確保を第一目的とした。手術検体150例の選定を行った。今回、新WHO分類に準拠した肺癌取扱い規約組織分類の改訂が行われ、予後ほぼ100%である微少浸潤性腺癌や上皮内腺癌と区別するために、特に置換性腺癌における浸潤の大きさが病理学的診断に必須となった。レトロスペクティブなⅠ期肺腺癌の病理学的所見と予後との相関が報告され、脈管(リンパ管)浸潤と2cm以上の浸潤を有する症例が再発を予測することができた(J Thoracic cardiovascular Surg; 2014)。自験例においても病理学的評価を行った。また他の転移指標となりうるACTN4活性(免疫染色およびFISH法)の評価を行う計画を行った。
3: やや遅れている
Ⅰ期肺癌における再発予測マーカーを構築し、さらに術後化学療法が必要な予後不良患者と不必要な予後良好患者を選択する治療選択マーカーを構築することを目的とした。当初300例規模の症例数の確保を予定としたため、H28年度初期より学習セットの確保を行った。まず病院倫理委員会の手続きに時間を要した。手術検体150例の選定を行った。今回、新WHO分類に準拠した肺癌取扱い規約組織分類の改訂が行われ、予後ほぼ100%である微少浸潤性腺癌や上皮内腺癌と区別するために、特に置換性腺癌における浸潤の大きさ、分化度、血管リンパ管浸潤の評価を含む病理学的評価を行った。また他の転移指標となりうるACTN4活性(免疫染色およびFISH法)の評価を行う計画を行った。症例確保の遅れと病理学的解析の遅れはあるものの、一連の研究の流れは構築できH29は障害なく症例数の確保はできるものと思われる。またFFPE標本はあらゆる病院で利用されているが、ホルマリンによるRNAの断片化により良質なRNA抽出は難しいとされる。よってFFPE専用のRNA抽出キットによるRNA抽出、プローブの選定および増幅条件設定を行うことにより前増幅処理(preamplification)およびフルダイムアレイによる発現解析を行う増幅法を開発することにより、質の悪い、微量のRNA安定した発現解析を行うシステムを構築する。本院ではホルマリン包埋切片のホルンリン過固定のものも存在し安定したRNA抽出方法の確立に時間を要したが、新鮮凍結標本からのRNA抽出の質に近づきつつある。
ホルマリン包埋切片からのRNA抽出法の確立を行い、リアルタイムPCR法を用いた4遺伝子発現法の確立を行う。その後150例のRNAを抽出する。さらにフルダイムアレイによる4遺伝子シグネチャーの発現解析をハイスループットに完結させる。目的4遺伝子のプローブプールを用いて前増幅処理を行う。その後フルダイムアレイ解析を行う。4遺伝子のコントロール遺伝子を参考に(-deltact)を求める。さらに、既に報告されているシグネチャーのスコアリング(0.104xBRCA1)+0.133xHIF1A+(-0.246xDLD1)+(0.378xXPO1)を算出する。これらの数値は、再発データをベースとして、発現値を使った多変量解析での各遺伝子のcoefficient係数を用いている(Cancer Epidemiol Biomarkers Prev; 2014)。そのスコアリングを用いてtertiles(三分位値)による低危険群 中危険群 高危険群に区分けし、臨床的アウトカムと比較する。同時にValidation sampleの集積、病理学的評価を行う。H28年度の症例集積において、症例数の確保の手順は確立しているので支障なくH29のさらなる集積は容易と思われる。本年度の課題としては、新鮮凍結標本からのRNA抽出を用いたものをコントロールとして、ホルマリン包埋標本からのRNA抽出、発現解析までの安定した再現性のある解析方法を確立することである。
症例集積や倫理委員会承認の遅れ、およびRNAの抽出法の確立の遅れが生じた。そのためRNA抽出キットおよび発現解析のためのプローブ、フルダイムアレイ、Taqman mastermixを含む発現解析試薬を使用しなっかた。しかし150例症例は確定しH29年度はすぐにホルマリン包埋切片からRNAを抽出しフルダイムアレイを用いた解析ができると思われる。またホルマリン包埋切片からのRNA抽出に関しては、本研究室にある抽出キットを使用したため予算額を使用しなかった。またPCRの条件設定に必要なTaqman mastermixを含む発現解析試薬は既存のものを使用したためH28は追加購入しなかった。
上記の理由により研究の遅れおよび予算の未使用が生じた。またホルマリン包埋切片からのRNA抽出に関しては、既存の試薬が消費したためH28分の予算を使用する予定である。H29年度は150例症例は確定しH29年度はすぐにホルマリン包埋切片からRNAを抽出しフルダイムアレイを用いた解析ができると思われる。さらにValidationセットの集積を行い続けてRNAを抽出しフルダイムアレイを用いた解析を行いたい。またH28年度より行っている病理学的評価とACTN4プローブによるFISH解析、免疫染色を用いた蛋白発現解析も同時に行い、4遺伝子シグネチャーの評価、病理学的評価およびACTN4活性を用いて万能な再発予測マーカーを確立したい。よって本年度予算の一部をACTN4遺伝子FISHプローブおよび免疫染色抗体にも計上したい。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 4件)
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