研究実績の概要 |
本研究は、薬剤性肺障害と間質性肺炎(特発性間質性肺炎のうちIPFとI-NSIP)における内皮細胞の関与について解明することを目的とする研究である。KL-6をはじめ肺胞上皮細胞由来のマーカーが既に臨床応用されているのに比べ、現在血液から測定できる内皮細胞マーカーはほとんどなく、臨床的に血管内皮細胞傷害を推測するのは困難である。そこで血漿中の内皮細胞由来の微小粒子(EMPs)を測定し、さまざまな臨床所見との関係を観察しながら、EMPsの臨床マーカーとしての可能性も含めて検討するのが本研究の主眼である。 本年度は最終年度であり、少数症例の追加を行った。現時点で特発性間質性肺炎計11例、薬剤性肺炎計3例がエントリーされた。一方で、死亡のため最後まで観察項目を実施できない症例も含まれる。 EMPsについては、フローサイトメトリーを用いVE-cadherin (CD144), E-selectin (CD62E), MCAM (CD146), PECAM-1 (CD31)を測定し、さらに肺動脈には乏しいとされるvon Willebrand factorのある場合とない場合で検討を行った。少数例の解析だが、特発性慢性間質性肺炎ではE-selectin陽性EMPsの相対的な増加傾向が見られた。また薬剤性肺障害では、PECAM-1やVE-cadherinの数が経時的に変化する傾向を認めている。但し、測定結果にばらつきが見られることが多いため、今年度はこれまでのEMPs検査を再度実施し、再現性の確認を行った。現在この測定結果と臨床マーカーの相関関係などを検討しており、今後論文化する予定である。
|