悪性中皮腫は石綿・アスベスト曝露に関連して胸膜・腹膜などに発生する予後不良の悪性腫瘍である。現在わが国においてアスベスト使用は禁止されているが、アスベスト曝露数十年後に発生する悪性中皮腫は今後さらに増加傾向を示すことが予想され、わが国にとっては大きな社会的問題である。建造物材料などアスベストは様々なところで使用されており、アスベストを扱う労働者に限らず、労働者の家族、アスベスト工場やアスベストを用いた建物周辺の住民にもアスベスト曝露が認められるために、アスベスト曝露で発生する悪性中皮腫対策は、国民にとっては非常に深刻な問題である。さらに悪性中皮腫は抗がん剤治療や放射線治療に抵抗性であり、かつ手術困難である症例が多いため、有効な治療法がまだ十分に確立されていないため、有効な新規治療法の開発研究は世界的に非常に重要である。研究代表者は臨床応用可能な悪性中皮腫の新規治療法の開発を研究目標にしている。現在までに研究代表者は、間質性肺炎・肺線維症の病態メカニズムの解明と新規治療法の開発研究を施行してきた。その結果、間質性肺炎・肺線維症と炎症性サイトカイン・線化関連サイトカイン・血管新生関連サイトカインやアポトーシスの関連についての研究成果をすでに報告している。間質性肺炎・肺線維症の主要な原因細胞のひとつが肺線維芽細胞であるが、その肺線維芽細胞と同様の間葉系細胞である中皮細胞の形質転換で悪性中皮腫は発症する。そのため研究代表者が現在までに行ってきた間質性肺炎・肺線維症の研究成果を中皮腫研究に発展させて、悪性中皮腫の新規治療開発を研究目的としている。
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