研究課題/領域番号 |
16K09569
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小荒井 晃 東北大学, 大学病院, 助教 (80458059)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | IL-33 / 慢性閉塞性肺疾患 / 酸化ストレス / 自然リンパ球 |
研究実績の概要 |
慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease;COPD)の増悪制御はその病態進行のみならず入院費増大など社会的負荷の観点からも必要不可欠である。近年、迅速かつ大量のサイトカイン産生能を持つ自然リンパ球が自己免疫疾患や喘息などの病態に関与する可能性が示唆されているが、COPDおよびその増悪病態においてその関与は未だ不明である。 本研究では、自然リンパ球の活性化に重要な気道上皮からのアラーミン放出、アラーミンに対する炎症細胞の免疫応答およびCOPD患者肺における自然リンパ球プロファイルについて検討した。昨年度、ヒト培養気道上皮細胞を用いて、タバコ煙などの酸化ストレスやウイルス感染によりIL-33発現が促進され、酸化ストレス存在下ではウイルス感染時のIL-33発現が増強する可能性を示し、また、IL-33発現においてNecroptosis経路がその一部に関与する可能性を示した。本年度においては酸化ストレスにおけるIL-33の発現制御の機序について検討を進め、酸化ストレス刺激によるIL-33の発現増強機序にMAPK経路が関与することを明らかにした。さらに、COPD患者由来の気道上皮でもその関与を示し、これらの結果を論文として報告した[Aizawa H, Koarai A, et al. Resp Research 2018]。 ヒト手術肺を用いた自然リンパ球の分離同定および炎症細胞(肺胞マクロファージなど)の反応性に関する検討は進行中であり、今後、COPD病態におけるIL-33を介した自然免疫応答機序をより明確にできる可能性がある。また、上記の検討結果は気管支喘息の病態においても重要である可能性が考えられ、気管支喘息の病態における評価も今後、併せて進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
気道上皮細胞を用いた検討では当初の計画以上に進展し、論文として報告することができた。しかし、ヒト手術肺組織からの自然リンパ球の分離同定に関しては、FACSでの目的細胞と考えられる細胞群の選定、評価までは進行しているが、その細胞のサイトカイン産生能等による細胞の確定が不十分であるため。
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今後の研究の推進方策 |
気道上皮培養細胞においてIL-33発現が酸化ストレスにより増強し、MAPK経路の関与を示し、ヒト手術肺から分離を行ったヒト気道上皮細胞での上記結果を確認することができた。今後、COPD病態に加え、気管支喘息病態においても検討を進め、健常者および気管支喘息患者由来の気道上皮を用いて、上記経路の反応性の比較などについて合わせて検討を進める予定である。 自然リンパ球の分離同定に関する検討では、H28、H29年度と同様に継続し、微小細胞検体に関するmRNA、サイトカインの発現確認方法の確立等を併せて進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 次年度使用額が生じた理由としては、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である。 (使用計画) 平成29年度の未使用額は平成30年度請求額と合わせ、平成30年度の研究遂行に使用する予定である。実際には阻害薬や抗体等の購入費用に用いる予定である。
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