研究課題
慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease;COPD)の増悪制御はその病態進行のみならず入院費増大など社会的負荷の観点からも必要不可欠である。近年、迅速かつ大量のサイトカイン産生能を持つ自然リンパ球が自己免疫疾患や喘息などの病態に関与する可能性が示唆されているが、COPDおよびその増悪病態においてその関与は未だ不明である。本研究では、自然リンパ球の活性化に重要な気道上皮からのアラーミン放出、アラーミンに対する炎症細胞の免疫応答およびCOPD患者肺における自然リンパ球プロファイルについて検討した。H28-29年度において2型自然リンパ球の活性化因子であるIL-33の気道上皮細胞における発現制御に酸化ストレスやウイルス感染が関わることを明らかにしたが、昨年度はさらに2型気道炎症病態におけるIL-33産生放出制御に関する検討を進めた。近年、真菌由来の蛋白分解酵素がIL-33の産生放出に関与する可能性が示唆されることから、真菌の一種であるアルテリナリア由来の抽出物刺激によるIL-33産生放出に、好中球エラスターゼインヒビターであるSLPIが影響を及ぼすのではないかと考え検討を行った。ヒト気道上皮培養細胞におおいてアルテリナリア抽出物刺激によりIL-33の産生放出が増強し、SLPIに対する遺伝子抑制によりアルテリナリア抽出物刺激後の培養上清中のIL-33は有意に増加した。以上より、アルテリナリア抽出物刺激による気道上皮からのIL-33産生放出にはSLPIが抑制性に作用している可能性が示唆された。さらに動物モデルを用いた検討を加えることで、プロテアーゼによるIL-33の産生調節機構を明らかにしていく予定である。この機序の解明により閉塞性肺疾患およびその増悪に対する新たな治療法の開発への道が開かれると考える。
すべて 2018
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Allergology International
巻: 67 ページ: 460~466
10.1016/j.alit.2018.02.008