研究課題
免疫グロブリン・スーパーファミリー細胞接着分子CADM1は非小細胞肺癌(NSCLC)を含む様々な上皮系の癌において腫瘍抑制に関与する.我々は,CADM1が小細胞肺癌(SCLC)において特異的なスプライシングを受けて高頻度に過剰発現し,悪性増殖能に関与することを見出した.次に,SCLCの分子生物学的特徴を検討するために,SCLC手術症例の長期治療成績を後ろ向きに解析した.当院で肺切除術を行いSCLCと診断された42症例を対象としたところ,病理病期はIA1/IA2/IA3/IB/IIA/IIB/IIIA/IIIB/IVAが2/5/1/6/3/8/13/3/1例で,観察期間は58.7±68.9ヵ月,5年生存率は57.2%であった.単変量解析では男性(p=0.048),術後補助化学療法なし(p<0.001),混合型(p=0.002),CEA高値(p=0.013),SCC高値(p<0.001)が有意な予後不良因子であった.また,手術検体の免疫組織化学染色でCADM1及び癌幹細胞マーカー候補(CD133,CD44,ALDH1)の発現を検討したところ,CADM1は71%で強陽性であり、患者の予後不良と有意な相関を示した.一方,癌幹細胞マーカー候補の発現は予後と有意な相関はなかった.以上の研究成果をまとめ,論文投稿中である.今年度は、安全な肺切除術を行うために,膿胸合併時の肺切除術の工夫を検討した.膿胸腔内に気管支断端を作るような解剖学的肺切除術は,術後気管支断端瘻の懸念から一般的に避けるべきだと考えられている.我々は,膿胸合併時の解剖学的肺切除術に際して,一期的に大網充填術や筋弁充填術,胸郭成形術を行い良好な結果を得た.この経験の解析により,これらの術式が術後膿胸や気管支断端瘻の予防に効果的であったと考える.以上の研究成果を「第37回日本呼吸器外科学会学術集会」で発表する事が出来た.
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