研究課題/領域番号 |
16K09573
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
玉地 智宏 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (20456015)
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研究分担者 |
廣瀬 晃一 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (90400887)
鈴木 浩太郎 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (90554634)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | IkBNS / NF-kB / Muc5ac / 杯細胞 / house dust mite |
研究実績の概要 |
吸入ステロイド薬を中心とした従来の治療に抵抗性の難治性喘息は、患者のみならず医療経済的にも負担が大きく問題となっている。難治性病態の機序の1つとしてあげられるのが、気道リモデリングや粘液過形成による気流制限であるが、その詳細なメカニズムは依然として不明である。そこで本研究では、気道上皮細胞の杯細胞分化および気道過敏性亢進におけるNFkB経路の役割とその制御機構を明らかにし、難治性喘息の新たな治療標的を見出すことを目的とした。 気道上皮細胞由来のサイトカインは、樹状細胞、Th2細胞、ILC2細胞を介してアレルギー性気道炎症を誘導する。今回、ILC2細胞におけるT-betを介したIL-9制御が炎症制御に重要であること(JACI 2016 Matsuki et al.)、またCD11b+樹状細胞に発現するDectin-1を介したチリダニ抗原(house dust mite)構成成分の認識が炎症誘導に結びつくこと(J Immunol 2017 Ito et al.)を明らかにした。 さらにNFkBを制御する働きを持つIkB蛋白ファミリーの1つであるIkBNSが、1.気道上皮細胞において杯細胞の代表的なムチンであるMuc5acの発現を制御すること、2.その結果、気道過敏性を制御すること、3.IkBNSがMUC5ACのプロモーター領域に結合することを明らかにした(Allergy 2016 Yokota et al.)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既にアレルギー性気道炎症のモデルマウスの作成と解析が行える状況にあり、さらに樹状細胞と気道上皮細胞の単離も可能であり、Dectin-1欠損マウスやIkBNS欠損マウスの解析結果もふまえ、おおむね順調に進展している。 当初の研究計画にある気道上皮細胞からのアプローチも、HDMを経気道投与した気道上皮細胞を単離してRNAシークエンスによる網羅的な遺伝子解析を行なう手法は確立している。 マウスの気管から単離した気道上皮細胞をAir-Liquid Interface Cultureで長期間培養することも可能である。 ILC2細胞におけるT-betを介したIL-9制御が炎症制御に重要であること、CD11b+樹状細胞に発現するDectin-1を介したチリダニ抗原(house dust mite)構成成分の認識が炎症誘導に結びつくことに加え、IkBNSが、気道上皮細胞において杯細胞の代表的なムチンであるMuc5acの発現を制御し、気道過敏性を制御することも明らかにした。 これらの結果を総合的に判断し、本研究計画はおおむね順調に進展しているものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
IkBNSがMuc5ac以外の因子を介して気道上皮細胞に働く可能性につきさらなる検討を加える。具体的には、house dust miteを経気道投与したIkBNS 欠損マウスおよび野生型マウスから、気道上皮細胞を分離して、RNA sequence法により発現の異なる遺伝子を網羅的に解析し、候補遺伝子の絞り込みを行っていく。 またIkBNSが制御するNFkB経路のいかなる因子がアレルギー性気道炎症の制御に関わるか検討を加える。house dust miteをはじめとする喘息の主要アレルゲンに対する応答には、気道上皮細胞における pattern recognition receptorsを介した NF-kB の活性化が重要であることが示されている。またIkBNS は抑制性 T 細胞の分化に重要な役割を果たすことも明らかにされている。以上のことから、NFkB経路がT細胞の分化に影響を及ぼし、その結果、気道上皮細胞へ影響を与える機序が考えられる。今後も引き続き気道上皮細胞と免疫細胞とのクロストークに着目して研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新たな遺伝子改変動物の導入が次年度にずれこみ、その導入費用とそれに伴う実験にかかる費用を次年度に繰り越すこととなったため。またRNA sequenceによる解析にかかる費用も次年度に持ち越している。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究の達成には、引き続きマウスの導入と飼育、Air-Liquid Interface Cultureなどの細胞培養に要する培養液/牛血清/プレート、各種解析に必要な抗体、合成DNA、制限酵素等の分子生物学的な試薬を研究経費として要する。一方、本学では、動物飼育施設、P2施設等の設備は整っており、また予定している研究に必要な機器も本学内で準備されているため、科学研究費補助金を大型機器等、備品の購入にあてる必要は生じない。RNA sequence解析は、本研究室とかずさ DNA 研究所との共同研究体制が既に確立されている。また研究は、本研究者および本学所属のスタッフと大学院生によって施行されるため、科学研究費補助金を人件費として使用する予定はない。 研究成果発表等に必要な旅費も公費を使用する予定であり、科学研究費補助金を使用する予定はない。
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