研究課題
本研究は、臨床検体の解析と、肺癌細胞株を用いた機能解析の両面より進めた。予備実験では、公開されているマイクロアレイデータを解析し、肺癌の予後と相関する膜貫通型タンパクの候補を4つ挙げていた。その中から、インテグリンα11遺伝子(ITGA11)のみが病期と発現量の相関がみられたために、ITGA11の研究を進めた。根治的切除を行った80例の非小細胞肺癌検体を解析し、ITGA11高発現群は低発現群と比較して、無再発生存期間が短いことを見出した。これはI期の患者のみの解析でも同様の結果であった。また、The Cancer Genome Atlasで公開されているRNAシークエンスデータより非小細胞肺癌患者900例以上を解析し、同様の結果であることを確認した。一方で、ITGA11の発現と腫瘍の大きさとは相関がなく、切除検体における血管浸潤やリンパ管浸潤もITGA11の発現量とは無関係であった。また、ITGA11低発現株のH23とH441にレンチウイルスベクターを用いてITGA11を強制発現して機能の変化を解析した。はじめに、ITGA11を強制発現しても、細胞増殖に及ぼす影響は見られなかった。一方で、ITGA11強制発現株は細胞が大きくなることを見出した。また、ITGA11の強制発現により、通常のプラスチックディッシュ上では細胞の遊走能が変わらないものの、コラーゲンを塗布したディッシュ上では遊走能が亢進した。さらに、コラーゲンを塗布したフィルター上で肺癌細胞株を培養すると、ITGA11強制発現株で浸潤能も亢進した。以上の結果より、ITGA11を高発現する肺癌は術後に再発する可能性が高く、予後が不良で、その原因としては、ITGA11が肺癌細胞の遊走と浸潤を亢進させるためである可能性が示唆された。本結果について、現在論文投稿を準備中である。
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