研究課題
本研究の目的は、ROR1によるカベオラ制御を介した様々な受容体からの生存シグナル機構を明らかにするとともに、バイパス経路によって獲得したEGFR-TKI耐性細胞に対して、ROR1のカベオラ制御機能を標的とした極めて独自性の高い耐性克服につながる基盤的知見を得ることである。昨年度までの研究成果により、ROR1がキナーゼ活性非依存的に、カベオラ構成分子であるCAV1やCAVIN1と相互作用するスキャフォールド蛋白質として機能することで、カベオラ形成の安定化を促して、カベオラに集積するEGFRやMET、IGF-IRなど様々な受容体の活性化を維持し、肺腺癌細胞の生存シグナルを担うことを明らかにした。平成29年度は、当初の研究実施計画よりも概ね順調に進展した。これまでの結果から、METやIGF-IRのリガンドであるHGFやIGF-I処理に伴うバイパス経路を介したEGFR-TKI耐性条件下の肺腺癌細胞株を用いて、ROR1の発現抑制を行ったところ、有意にアポトーシスが誘導され、顕著な細胞増殖の阻害が観察された。また、同条件下でのROR1の発現抑制は、PI3K-AKT軸からの生存シグナルを著しく低下させることが分かった。バイパス経路によるEGFR-TKI耐性細胞での、カベオラ構成分子であるCAV1やCAVIN1の発現抑制においても効果的な増殖阻害が観察され、生存シグナルの低下が認められた。さらに、バイパス経路を介したEGFR-TKI耐性を獲得した肺腺癌以外の皮膚癌細胞や咽頭癌細胞においてもROR1の発現抑制はCAV1の発現低下を引き起こし、細胞増殖を有意に阻害することを見出した。これらの研究結果から、様々な癌腫でのROR1を介したカベオラ制御機能の重要性が判明し、ROR1の抑制はEGFR-TKIに対する耐性を克服できることから、分子標的としてのROR1の有効性を示すことができた。
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