研究課題/領域番号 |
16K09581
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
滝本 宜之 大阪大学, 医学系研究科, 特任助教(常勤) (60767854)
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研究分担者 |
武田 吉人 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (40452388)
井上 義一 独立行政法人国立病院機構(近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター), 臨床研究センター, 臨床研究センター長 (90240895)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リンパ脈管筋腫症 / LAM / エクソソーム / プロテオミクス / バイオマーカー / 結節性硬化症 / TSC |
研究実績の概要 |
本研究課題ではリンパ脈管筋腫症(Lymphangioleiomyomatosis: LAM)の病態解明を行っている。 LAMはLAM細胞が主にリンパ行性に肺に転移し、多発性嚢胞を形成する、希少性難病でる。LAM腫瘍の肺への転移により、肺が進行性に破壊され、進行すると、肺移植が必要となる。LAMは癌抑制遺伝子のTSC遺伝子異常により生じる腫瘍が病態の本質であることが明らかになってきた。基礎疾患として結節性硬化症(tuberous sclerosis complex : TSC)に伴って発生するTSC-LAMと、単独で発生する孤発性LAM(Sporadic-LAM)とに分類される。 本年度は、臨床への応用の観点から、血清エクソソーム(Exo)からLAMのバイオマーカー・治療標的の探索を行った。Exoは種々の細胞から分泌されるエンドソーム由来の小胞顆粒で、核酸や蛋白を内包する細胞間・臓器間の新規メッセンジャーとして注目されている。これまでLAM患者血漿プロテオミクスでは疾患特異的な蛋白は検出できていないが、Exoに着目して新規の疾患特異的蛋白の検出を試みた。健常人女性4名、Sporadic-LAM患者3名、TSC-LAM患者5名について、標準法であるシュクロース利用・超遠心法により血清よりExoを単離し、最新プロテオミクスを行い、573種類のExo蛋白を同定した。バイオインフォマティクスによる蛋白プロファイリングを行ったところ、1)LAM患者血液のexosome蛋白は凝固系亢進・炎症の病態を捉えていた。2)S-LAMとTSC-LAMでは蛋白Profileに著明な差を認めた。さらに、絞りこまれたバイオマーカー候補27個の中にはLAM細胞や肺組織由来の可能性がある膜蛋白や鍵分子が含まれていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血清エクソソーム(Exo)を解析することでLAMの病態を新たに捉えることができた。LAMのバイオマーカー・治療標的の候補蛋白を見いだすことができた。本研究結果はH29年度の呼吸器学会総会で発表予定である。 一方、LAMモデルの確立には準備を要しているが、海外の研究者と共同研究にてin vitro, vivoのモデルの確立に取り組んでいるところである。
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今後の研究の推進方策 |
Exoに着目することでLAMの病態を捉えることやバイオマーカー候補を見いだすことに成功した。選択的・定量プロテオミクスにて検証進める。バイオマーカー探索としてはmiRNAの解析も行っており、マルチオミックスとして統合解析を進める。一方、LAMモデルの確立には準備を要しているが、海外の研究者と共同研究にてin vitro, vivoのモデルの確立に取り組んでいるところでおり、それを用いての候補蛋白の機能解析を進める。テトラスパニンの病態への関与に関しても、引き続き、並行して検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度予定していた選択的・定量プロテオミクス(Selected/multiple reaction monitoring: SRM/MRM)が予定より若干遅れた。海外より依頼したLAM細胞やLAM患者からのiPS細胞の入手が手続き等でずれ込んでいる。これら本年度予定していた研究で翌年に持ち越されるものがある。
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次年度使用額の使用計画 |
上記、選択的・定量プロテオミクス(Selected/multiple reaction monitoring: SRM/MRM)が進行中である。miRNAと合わせたマルチオミックスのバイオインフォマティクスも予定している。来年度はLAM細胞を用い、in vitroやin vivoの実験を行う予定である。これらの研究を実行するためには欠かせない。
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