研究課題/領域番号 |
16K09583
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
町田 健太朗 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 客員研究員 (90597569)
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研究分担者 |
井上 博雅 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (30264039)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 喘息 / アレルギー性気道炎症 / TRP |
研究実績の概要 |
ウイルス感染、大気汚染物質への曝露や気圧・温度の変化などの非特異的刺激よる喘息症状増悪の詳細なメカニズムは不明である。温度、pH、圧などさまざまな物理・化学的な細胞外刺激の感知を行うセンサーとしての役割を果しているTRP(transient receptor potential)チャネルは、肺の構築細胞や免疫・炎症細胞にも広く発現していることが近年報告されている。本研究では喘息の病態におけるTRPチャネルの関与を検討し、TRPチャネルを介した免疫・アレルギーの制御機構を明らかにすることを目的としている。 本年度は、TRP-X遺伝子欠損マウスの肺にアレルギー性炎症を誘導して、炎症の程度及びTh2サイトカインの産生を野生型と比較した。炎症の程度は気管支肺胞洗浄液(BALF)中の炎症細胞数、組織所見で評価した。 野生型マウスに気道炎症を誘導すると、BALF中の好酸球数の増加、肺組織の炎症細胞浸潤、杯細胞過形成、気道分泌物産生過多、肺でのIL-5、IL-13mRNAの発現、BALF中のIL-5、IL-13産生の増加を認めた。次にTRP-X遺伝子欠損マウスにアレルギー性気道炎症を誘導したところ、野生型マウスと比較して、好酸球性気道炎症、杯細胞過形成、気道分泌物産生過多が有意に低下しており、更に肺でのIL-5、IL-13mRNAの発現、BALF中のIL-5、IL-13産生が低下していた。 これらの結果は、TRP-XのシグナルがIL-5、IL-13の産生を介してアレルギー性気道炎症の誘導に関与している可能性を意味している。今後は、TRP-Xが関与する炎症のメカニズムを明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、アレルギー性気道炎症マウスモデルを作製し解析を行った。遺伝子欠損マウスを用いて、TRP-XがTh2サイトカインの産生、好酸球性気道炎症の誘導において重要な役割を果たしていることを見出したが、解析に使用するTRP-X遺伝子欠損マウスの繁殖に時間を要しており、気道構築細胞、炎症細胞におけるTRP-Xチャネルの発現、機能解析については当初の予定よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
TRP-X遺伝子欠損マウスを用いたアレルギー性気道炎症モデルの解析を継続するとともに、気道におけるTRP-Xチャンネル発現細胞、Th2サイトカイン産生細胞を同定する。更にTRP-Xチャンネル発現細胞の機能解析を行い、Th2サイトカインの産生機序と制御機構におけるTRP-Xチャンネル役割を明らかにする。 アレルギー性気道炎症モデルでは、IL-25、IL-33、TSLPなどの上皮由来サイトカイン、2型自然リンパ球(ILC2s)の関与についても報告されている。本研究ではTRP-Xを介した自然免疫の制御機構についても検討する。 研究費は、動物モデルの解析、細胞レベルでの解析、および消耗品に使用する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度中にTRPチャンネル発現細胞の解析を行う予定であったが、解析に使用するTRP-X遺伝子欠損マウスの繁殖に時間を要しており、気道構築細胞、炎症細胞におけるTRP チャネルの発現、機能解析については当初の予定よりやや遅れているため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は解析に必要なTRP-X遺伝子欠損マウスを確保できる目途がついている。そのため、研究計画に変更はなく、当初予定通りの研究を進めていくこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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