研究実績の概要 |
血中抗体価の測定に用いる結核菌特異タンパク抗原として、過去の研究により高い免疫誘導能を有することが報告されている結核菌抗原ESAT-6, CFP10, MDP1, Ag85A, Acr, HBHA, HrpA, Tuf, PPE68, mpt63, Rv2009, Apaについて、pET22b(+) によるヒスチジンタグ付与組換えタンパクの発現および精製を行った。また、結核菌脂質抗原として、結核菌H37Rv株死菌体よりtrehalose 6,6’-dimycolate (TDM) を抽出、精製した。こうして得られた結核菌抗原のうち、組換えタンパク抗原7種類について、ELISA法による血中抗体価の測定を行った。対象は、活動性結核患者のうち、治療前と治療後の血清が確保された33名とした。その結果、抗原特異的IgGは治療前と比較して治療後に減少する傾向があり、HBHAおよびHrpAに対するIgG抗体価は治療前の塗抹検査での検出菌数と正の相関を示すことがわかった。以上のことから、血中IgG抗体価は宿主内での結核菌の菌量を反映していることが示唆された。一方、血中IgAは治療前後で有意な差が認められず、塗抹検査による検出菌数との相関も認められなかった。結核の重篤度を示すマーカーとIgA抗体価の比較を行ったところ、治療前におけるHrpAに対する抗体価は、治療前の血中CRP値と負の相関を示すことが明らかになった。加えて、IgAの抗原への結合能を調べた結果、ESAT-6, MDP1, Acrに対するIgAの結合能が治療後に高値を示した群では、治療による血中CRPの減少率が高いことがわかった。以上のことから、感染初期におけるIgA産生および結合能の上昇は炎症抑制的に働くことが示唆された。
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