東京病院を受診した結核患者(活動性結核および陳旧性結核)において、結核菌特異抗原に対する血中IgGおよびIgA抗体価をELISA法を用いて測定し、結核の病態を反映する各種臨床マーカーとの相関について解析を行った。その結果、初診時の血中C reactive protein (CRP) 値が高い患者群はレントゲン所見、塗抹検査、アルブミン値により示される結核の重篤度が有意に高いという結果が得られた。また、結核の病状を示す臨床データのうち、結核菌特異抗原に対するIgG抗体価は喀痰中の結核菌数と正の相関を示すのに対して、血中IgA抗体価が高い患者においては発症時の炎症マーカーが有意に低く、IgAが菌抑制的に働いていることが示唆された。 次に、複十字病院を受診した結核患者の治療前、治療後における血中抗体価および抗体の抗原への結合力(アビディティ)を測定し、臨床マーカーとの相関を解析したところ、初診時ですでに高いIgGアビディティを獲得している人ほどCRP値が低値であることがわかった。また、初診時のIgA抗体価が高い患者群ではCRP値が有意に低いことが明らかになった。さらに治療後における各抗体と治療開始から60日経過した時のCRP値を比較したところ、IgAにおいてのみアビディティの値とCRP値の逆相関が認められ、治療によりIgAアビディティが上昇した患者群ではCRP値がより低下することがわかった。 さらに、CRP値とアルブミン値あるいはIgA抗体価に相関を認めたことから、患者の栄養状態と結核の病態および液性免疫応答について比較したところ、治療前のCRPとアルブミン値は逆相関を示す一方で、血中アルブミンが高い群では血中コレステロール値が有意に高いことが明らかになった。加えて、治療前におけるIgAが高い群では血中HDLが高く、治療後の血中コレステロールが高い群ではCRP値が低いことがわかった。
|