研究課題/領域番号 |
16K09586
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
田島 健 順天堂大学, 医学部, 助教 (50384102)
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研究分担者 |
茂櫛 薫 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (60569292)
高橋 史行 順天堂大学, 医学部, 准教授 (70327823)
高橋 和久 順天堂大学, 医学部, 教授 (80245711)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ヒストンメチル化 / ヒストン脱メチル化酵素 / エピジェネティクス / LSD1 / 小細胞肺がん / 中皮腫 |
研究実績の概要 |
本研究「肺癌におけるヒストンメチル化による癌抑制遺伝子不活化の解明」の目的は、エピジェネティクスによる抗腫瘍機構の制御メカニズムを解明し、新たな肺癌治療を模索する事である。近年、癌抑制遺伝子の不活性化のメカニズムに関してエピジェネティックな修飾が重要である事が報告されてきた。申請者は、43種類のヒストンメチル化酵素(KMTs)を標的としたshRNA libraryによるスクリーニングを用い、癌抑制遺伝子の一つがKMTsにより制御されている事を報告した(Tajima K. Nature Commun 2015;6,8257)。今回ヒストンメチル化、特にヒストン脱メチル化酵素(KDTs)の代表であるLSD1に着目したところ、小細胞癌でLSD1のsplicing variantであるLSD1+8aの発現と神経分化マーカーであるSYP/NCAM/CHGAの発現が正の相関を示し、また小細胞肺がんにおいてLSD1+8aの発現を特異的に抑制する事により神経分化マーカーの発現が抑制されることが明らかになった。昨年度は更にLSD1がEMTに関与している事に着目し、間葉系の性質をもつ中皮腫に新たに着目した。中皮腫は極めて予後不良な疾患であり、新規の治療標的の発見が急務である。従来とはまったく異なった治療法として、エピジェネティクス、特にヒストンメチル化に着目し、LSD1によるEMTを標的とした中皮腫の新たな治療標的を模索している。LSD1を阻害することにより、上皮系の中皮腫細胞株が間葉系性質を示す事を明らかにし、現在はLSD1が治療標的としてなり得るか検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初はヒストンメチル化による癌抑制遺伝子の制御を中心に解析してきたが、癌抑制遺伝子以外の神経分化系への分化やEMTへの関与といった非常に興味深い結果が得られていている。現在までにヒストン脱メチル化酵素であるLSD1+8aと神経分化マーカーであるSYP/NCAM/CHGAの発現が正の相関を示し、またLSD1+8aの発現を特異的に抑制する事により神経分化マーカーの発現が抑制されることを示し、LSD1+8aがSCLCで神経分化に関与している可能性が極めて高い事を明らかにした。昨年度は、更に中皮腫においてLSD1をターゲットとすることにより、ある特定のsubgroupで抗腫瘍効果が高い事を見出した。これらのことによりヒストンメチル化が治療標的としてなり得ることが強く示唆されており、概ね順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに中皮腫においてもLSD1をターゲットとすることにより、ある特定のsubgroupで抗腫瘍効果が高い事を見出しているが、下流のターゲットに関しては未知である。このため、これらの下流のシグナルを同定するため、microarrayやChIP- sequenceを用い大規模に網羅的にメチル化と遺伝子の発現の変化を検討していく。また同定した標的遺伝子をクローニングし機能解析を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、小細胞肺がん以外に中皮腫にも着目しているため、当初よりも上記の解析を数多く施行する必要があり、当初の予定とはずれが生じている。本年度はMicroarray・ChIP-sequence等の次世代シークエンサーを使用した網羅的な解析により詳細なメカニズムを解明していく予定である。
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