研究課題
本研究「肺癌におけるヒストンメチル化による癌抑制遺伝子不活化の解明」の目的は、エピジェネティクスによる抗腫瘍機構の制御メカニズムを解明し、新たな肺癌治療を模索する事である。近年、癌抑制遺伝子の不活性化のメカニズムに関してエピジェネティックな修飾が重要である事が報告されてきた。申請者は、43種類のヒストンメチル化酵素(KMTs)を標的としたshRNA libraryによるスクリーニングを用い、癌抑制遺伝子の一つがKMTsにより制御されている事を報告した(Tajima K. Nature Commun 2015;6,8257)。今回ヒストンメチル化、特にヒストン脱メチル化酵素(KDTs)の代表であるLSD1に着目したところ、小細胞癌でLSD1のsplicing variantであるLSD1+8aの発現と神経分化マーカーであるSYP/NCAM/CHGAの発現が正の相関を示し、また小細胞肺がんにおいてLSD1+8aの発現を特異的に抑制する事により神経分化マーカーの発現が抑制されることが明らかになった。更にLSD1が上皮間葉転換(EMT)に関与している事に着目し、間葉系の性質をもつ中皮腫に新たに着目している。肺がんと同様に中皮腫は極めて予後不良な疾患であり、新規の治療標的の発見が急務であるが、エピジェネティクス、特にヒストンメチル化に着目し、LSD1によるEMTを標的とした中皮腫の新たな治療標的を模索している。LSD1を阻害することにより、上皮系の中皮腫細胞株が間葉系性質を示す事を明らかにし、更に殺細胞性抗がん剤に対して感受性を示す事も明らかとなった。現在はLSD1が治療標的としてなり得るか検討中である。
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