研究課題
T細胞に発現する多様な補助シグナル分子によってT細胞受容体を介したシグナルは正または負に制御される。抑制性補助シグナル分子は、免疫チェックポイント分子と呼ばれ、これに属するCTLA-4やPD-1は、T細胞を負に制御し免疫寛容に関わる。CTLA-4、PD-1、PD-L1に対する抗体は、悪性黒色腫や肺がんなどに有益性が示され、がん治療に大きな変革をもたらした。CTLA-4とPD-1は、活性化T細胞に発現し、前者はCD28と共有のリガンドであるB7-1/B7-2との結合を競合することにより、後者はB7のホモログであるPD-L1(B7-H1)とB7-DC(PD-L2)との結合により、免疫応答を負に制御する。これら以外にも複数の新しい免疫チェックポイント分子が注目されている。PD-L1同様にCD28/B7ファミリーホモログであるB7-H3、B7-H4、BTNL2もまた免疫チェックポイント分子としてがん免疫の抑制などへの関与が示されているが、その機能、及び受容体に関しては明らかではない。PD-1ホモログもT細胞に対して抑制的に作用する可能性があり、本研究においては、抗PD-1ホモログ抗体による新規抗体治療開発を目的としている。現在、得られている抗PD-1ホモログ抗体は、喘息モデルマウスを悪化させており、中和抗体である可能性があり解析を進めている。また、CD28/B7ファミリーホモログであるB7-H3、B7-H4、BTNL2に関しても、抗体作製を進めている。これらのほか、免疫チェックポイント阻害療法は、重篤な合併症として間質性肺炎を発症することが知られるが、新しい免疫チェックポイント阻害薬として期待される抗TIM-3抗体が肺胞マクロファージによる死細胞除去を阻害することでブレオマイシン誘発間質性肺炎モデルマウスを増悪させることを明らかにした。
3: やや遅れている
新たな抗体の樹立が遅れており、抗体の機能的なスクリーニングも遅れている。このため、分子の機能解析も遅れている。
抗PD-1ホモログ抗体の機能解析、及び、新たな抗PD-1ホモログ抗体の樹立を進める。また、同時に同じくCD28/B7ファミリーホモログであるB7-H3、B7-H4、BTNL2に関しても、抗体作製を進めている。チオグリコレートにて誘導したマウス腹腔滲出性マクロファージのmRNAから、これらホモログのcDNAをRT-PCRによりクローニングした。組換え発現ベクターに導入し、これらホモログと免疫グロブリンのキメラ蛋白をチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に発現させ、培養上清からプロテインGカラムを用いて可溶型キメラ蛋白を精製している。今後、これらを抗原として、Sprague Dawleyラットの足底に皮下注射で免疫を行い、リンパ節B細胞を回収し、 マウスミエローマ細胞との細胞融合を行い、融合細胞(ハイブリドーマ)を作製、これらCD28/B7ファミリーホモログに結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングし、これらホモログの抗体を樹立する。
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