研究課題/領域番号 |
16K09589
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
瀬山 邦明 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (10226681)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リンパ管内皮細胞 / 内皮間葉転換 |
研究実績の概要 |
リンパ脈管筋腫症(LAM)患者の肺移植、病理診断時の胸腔鏡(VATS)下生検肺組織、のそれぞれ一部からFlow cytometryにてリンパ管内皮細胞(LEC)を分離・培養する方法を確立し、平成29年度までの2年間に肺移植例(3例)、VATS肺組織(2例)、から高純度にLECを分離・培養に成功した。同時に、正常肺組織から肺のLECを同様の方法で4例から分離した。一般に内皮間葉転換(EndoMT)を誘導するサイトカインとしてTGF-βが知られており、LAM肺組織でも発現しているため、市販の皮膚微小血管由来のLECを用いα-SMA、vimentin, VEGFR-3、LYVE-1等を指標に条件検討したが、EndoMTは認めなかった。一方、TNF-αを用いると形態変化および上記内皮・間葉、マーカーの変化がEndoMTを示唆するデータが得られたが、LAM病態とは関連性のないサイトカインであり、これ以上の検討はしないこととした。次いで、皮膚LEC、LAMのLEC、正常対照肺LECについて、LAM細胞から分泌されるGPNMBやFibronectinでEndoMTが誘導されるかを検討したが、明らかな変化は3種類のLECで認めなかった。次に、3種類のLECについて、増殖因子刺激(VEGF-AとsVEGFR-A、VEGF-C、VEGF-D)やGPNMBに対する増殖反応特性を比較検討したが、3種類のLECで大きな相違は認めなかった。 LAM細胞やLAM病巣中のLECを安定して研究に使用できるよう、生理的条件により近い状況で不死化し細胞株を樹立することが重要と考え、hTERT遺伝子導入による細胞数樹立をめざし、遺伝子導入用ウイルスを作成した。平成30年度には不死化の実験を開始する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
内皮間葉転換(EndoMT)を誘導すると想定していたTGF-β、LAM細胞が高発現するGPNMBやFibronectin等のタンパク質を添加してEndoMTの指標を調べたが、今のことろpositiveな結果は得られていない。さらに、LAM肺移植時の摘出肺組織から分離したLECの凍結保存細胞において、3例中2例が解凍後に増殖しないトラブルが発覚し、LAM病巣中のLECを豊富に含む試料が1例しかなくなってしまった点も、様々な実験を企画する上での制約になってしました。LAM診断時のVATS肺組織から分離したLECは2例で使用可能な状況だが、肺内でのLAM病変そのものが移植肺に比して非常に少ない軽症例であるため、LAM病巣由来のLECを含む割合がすくないために、実験結果に明らかな差が出ない可能性が考えられた。 2014年12月からLAMの治療薬としてシロリムスが保険適応となったことにより、LAM患者の肺移植実施例が減少している。この点も今後、LAM病巣で増殖するLECを入手しがたくなることが予測される。
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今後の研究の推進方策 |
LAM細胞やLAM病巣中のLEC、等の患者携帯からの分離は今後困難となることが予想されるため、hTERT遺伝子導入を平成30年度には推進する。LECのEndoMTの研究については、LEC単独での培養ではin vivoの状況を再現できないと考え、Flow cytometryでLAM肺組織から分離した間葉系細胞(LAM細胞を含む)との共培養することで、皮膚微小血管由来のLEC、LAMのLEC、正常対照肺LECについてEnoMTが起こるかどうか検討する。
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