研究実績の概要 |
リンパ脈管筋腫症(LAM)患者の肺移植、病理診断時の胸腔鏡(VATS)下生検肺組織、肺癌患者の切除肺の非癌部正常組織から、FACSにてリンパ管内皮細胞(LEC)を分離・培養する方法を確立し、最終的に肺移植例のLEC(4例)、VATS肺生検のLEC(3例)、正常肺対照LEC (5例)を分離培養できた。これらの肺LECの内皮細胞用メディウム中での増殖特性を検討したところ、LAM移植肺LECの増殖は、LAMVATS生検LECや正常対照肺LECに比して約2倍の早く増殖した。次に、内皮細胞増殖因子であるVEGF-A、VEGF-C、VEGF-Dの各単剤や組み合わせ刺激に対する反応性を比較検討したが、ベースラインからの増殖反応性に3群のLECに差を認めなかった。増殖因子中ではVEGF-Aが最も強く増殖を促した。一方、遊走能の検討ではLAM移植肺LECでは正常対照に比べて約1.5倍に亢進していた。遊走能に対する価各増殖因子の効果を検討したところ、VEGF-CDやDは顕著に遊走を亢進させたが、ベースラインからの反応性は3群のLECで差がなかった。LECの代表的な機能タンパク質の発現を検討したところ、LAM移植肺LECでは正常対照に比べてLYVE-1の発現が約1/3へ有意に減少し、一方、VEGFR-3の発現が約3倍に亢進していた。LECの遺伝子発現をマイクロアレイ解析で網羅的に検討したところ、26,083解析遺伝子中744遺伝子(2.8%)が正常対照LECに比べ2倍以上の変化を示し(増加366遺伝子/減少378遺伝子)、遺伝子オントロジー解析ではcell migration関連遺伝子の変化が際立っていた。LAM移植肺から培養したLAM細胞やLECを安定して研究に使用できるようウイルスベクターを用いたhTERT遺伝子導入による細胞数樹立を試みたが、本年度は樹立に至らなかった。
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