本研究では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者における気腫分布の多様性と呼吸機能、気道可逆性に関する検討を行い、気道可逆性は気腫分布の上肺野、また下肺野有意の分布により異なり、ADRB2遺伝子変異による気道可逆性の変化は上肺野、また下肺野有意の気腫分布に分けて検討することで優位な気道可逆性の違いが認められることを明らかとした。 本年度は本研究の患者群における患者特性を明らかとするため、患者群の筋肉量をInbodyを用いた生体電気インピーダンス法(BIA)と、胸部CTから得られた脊柱起立筋面積より測定し、患者群の呼吸機能、身体活動性との比較を行った。その結果、%一秒量はBIAを用いた筋肉量、特に体幹の筋肉量、脊柱起立筋面積とも有意に相関した。BIAによる体幹筋肉量は胸部CTより測定した脊柱規律筋面積と良好な相関関係を示し、さらに気腫の重症度(%LAA)とも相関した。6分間歩行試験の距離と筋肉量も良好な相関を示したが、下肢筋肉量との相関が最も良好であった。気道可逆性と体幹筋肉量は有意な相関関係を示さず、ADRB2遺伝子による体幹筋肉量にも有意な差は認められなかった。 COPD患者において、一秒量と気腫病変の悪化は体幹の筋肉量と最も相関することが示され、呼吸機能や身体活動性の向上には体幹や下肢筋肉量の測定が有用であることが示唆された。ADRB2遺伝子や気腫多様性の違いによる気管支拡張剤の治療効果が、COPD患者の予後に関連するサルコペニアや身体活動性の向上につながるかどうかは、今後の検討課題である。
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