研究実績の概要 |
昨年度までの研究から、尿毒素のインドキシル硫酸が筋細胞内の代謝に影響を与え、筋減弱症(サルコペニア)を誘導すること明らかにした。そこで本年度は、組織での代謝変化経路のモニタリングと、治療薬候補の検討を行った。腎不全モデル動物はC57BL/6Jに0.2%アデニン食を7週間与え、アデニン誘発腎不全モデルマウスを作成した。さらに、治療候補薬である経口吸着炭であるAST-120を4週間投与した。最初に、腎不全時に代表的尿毒素である、インドキシル硫酸(IS)とパラクレジル硫酸(PSC)が各組織(脳,心臓,肝臓,腎臓,筋肉,膵臓,脾臓,白色脂肪,褐色脂肪,精巣,胸腺,肺,小腸,大腸,盲腸)へ蓄積するかについて検討した。またAST-120による蓄積軽減の評価についても行った。その結果、ISもPCSも腎不全時に対象としたすべての組織に蓄積することが明らかとなった。AST-120投与で腎臓、筋肉、精巣、脾臓に蓄積したISは有意に減少した。一方、PCSはすべての臓器でAST-120投与で蓄積が有意に減少した。さらに、組織に蓄積した尿毒素の分布について、イメージMSで評価した。ISおよびPCSの組織内分布は、腎臓以外の組織では、装置の検出感度以下であるため観察することができなかった。腎臓でのみISとPCSの観察することができ、腎臓の障害を受けている領域に蓄積していることが明らかとなった。この結果は、免疫染色の結果と一致していた。また、AST-120投与による組織内尿毒素蓄積軽減による組織機能等の回復について評価を行った。AST-120投与で、腎不全時の腎機能、線維化の回復は認められなったが、筋組織で骨格筋筋束横断面の面積が改善した。今回の結果から、腎不全時に尿毒素は全身臓器に蓄積し、AST-120投与でその蓄積が軽減し、骨格筋では筋束横断が改善することを明らかにした。
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