研究実績の概要 |
昨年度の研究から、腎不全時に尿毒素であるインドキシル硫酸、p-クレシル硫酸は全身臓器(脳,心臓,肝臓,腎臓,筋肉,膵臓,脾臓,白色脂肪,褐色脂肪,精巣,胸腺,肺,小腸,大腸,盲腸)に蓄積し、AST-120投与でその蓄積が軽減することを明らかにした。しかしながら、AST-120の蓄積軽減効果はインドキシル硫酸とp-クレシル硫酸で異なっており、インドキシル硫酸では3割程度の減少であったが、p-クレシル硫酸は全ての臓器において検出されない程度のレベルになっていた。そこで、今年度はAST-120の尿毒素および腸内細菌叢に与える影響について検討を行った。コントロール群、AST-120投与群、アデニン誘発腎不全マウス群、アデニン誘発腎不全マウス+AST-120投与群の4群を対象に、便中のインドキシル硫酸とp-クレシル硫酸の前駆体であるインドールとp-クレゾール、および便中腸内細菌叢について評価を行った。その結果、便中インドールは全ての群で検出されたが、p-クレゾールはAST-120投与群で検出されなかった。またインドール産生関連腸内細菌は4群間で差を認めなかったのに対し、p-クレゾール産生関連腸内細菌はAST-120を投与した群では検出されなかった。以上のことから、AST-120は腸内の尿毒素前駆体だけではなく、尿毒素の産生に関わる腸内細菌叢にも影響を及ぼすことが明らかとなった。AST-120が与える影響として、腸内細菌叢にも影響を与えることはこれまでに報告がなく、新しい発見となった。
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