研究課題
糖尿病性腎症患者が著増しており、糖尿病性腎症の病期進行抑制のための治療法の確立が急務である。糖尿病性腎症進行にアルドステロンやMineralocorticoid受容体(MR)が関与すると示唆されているが、最近MRに結合しその作用を抑制する蛋白(Corepressor)、GEMIN4が同定された。本研究の目的は、メサンギウム培養細胞にGEMIN4のpromoter配列を発現したGEMIN4-Luc安定発現株を樹立し、同細胞を用いてGEMIN4の作用を活性化する化合物のスクリーニングを網羅的に探索・特定した後、1型糖尿病性腎症モデル(iNOS/RAGEダブルTGマウス)に投与を行い、糖尿病性腎症の発症・進展抑制効果と、既存のMR拮抗薬との併用の有用性を検証することである。以上より、糖尿病性腎症の進行予防のための創薬・新規治療法の確立を目指している。糖尿病性腎症の治療薬は、これまでもレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)阻害薬が使用されてきたが、アルドステロン・ブロックの腎保護作用の機序に関しては未だ十分には解明されていない。GEMIN4などのMRのCorepressorはごく最近明らかになったこともあり、MRに結合する蛋白を標的にした新規創薬は全く行なわれておらず、本研究は非常に新規性が高い。また既存のMR拮抗薬との併用によって相乗効果が期待できる可能性がある。更に、in vivoでの検証実験に用いるiNOS/ RAGEダブルTGマウスは1型糖尿病性腎症モデルとして非常に優れており、現時点では本邦の東北大学と金沢大学でしか継代していない事から、新規リード化合物の尿中アルブミン減少効果や腎組織病変改善効果を世界に先駆けて明らかにする事が可能となると考えられる。
3: やや遅れている
野生型(コントロール)マウス、iNOS/RAGEダブルTGマウスEPL投与iNOS/RAGEダブルTGマウスから糸球体のみを単離し、糸球体よりRNAを抽出し、DNAの合成・cDNAマイクロアレイ解析を施行したが、糸球体の単離の手技の安定性の問題から十分な解析を行うことが出来なかった。現在はIn Vitro実験を集中的に進めているが、GEMIN4‐Luc安定発現株の作成に予想より時間がかかっているため、並行して作成して先に発現株が得られたChoRE-Luc安定発現株を用いて、東北大学化合物ライブラリーのハイスループットスクリーニング(HTS)を行い、2個のヒット化合物が得られた。現在、同化合物を、iNOSトランスジェニック(TG)マウスに投与して、尿中アルブミン排泄量の検討を行っている。
GEMIN4‐Luc安定発現株が得られた後に、東北大学化合物ライブラリーのハイスループHTSを行い、得られたヒット化合物をiNOS/RAGEダブルTGマウスに投与し、尿中アルブミン排泄量の検討を行う。更に、東北大学大学院薬学研究科と共同して、得られたヒット化合物の合成展開を進め、より活性が高い毒性の低くリード化合物を得ることを計画している。
<理由>動物実験がパイロットスタディーで予想通りに上手く進まなかったため、In Vitoroの研究に専念するように研究方針をシフトすることになったため。<使用計画>GEMIN4‐Luc安定発現株の樹立を再優先事項とし、化合物ライブラリーのハイスループHTSのスクリーニングを行うことに尽力する。研究発表のための学会参加の旅費や、論文発表のための英文校正などに研究費を効率的に振り分けて使用したい。
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FEBS Open Bio
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