我々は、TGF-beta1による糸球体上皮細胞障害において、micro-RNAがどのように関与しているかを調べるために研究をすすめてきた。 まず、TGF-beta1を作用させた培養糸球体上皮細胞において、コントロールの細胞と比べ、miR-143の発現が有意にに上昇することをmicroarrayとRT-PCRでで確認した。次に、レンチウイルスベクターを用いてmiR-143を高発現させた培養糸球体上皮細胞を用いて、以下のようにmiR-143の機能解析を行った。まず、レポー ターアッセイにより、miR-143を高発現させた細胞でSmad binding elementのレポーター活性がコントロールの細胞と比べ上昇することが示された。また、ウエスタンブロットとRT-PCRによるWT1の発現解析により、miR-143を高発現させた培養糸球体上皮細胞ではWT1の発現が低いことが示された。更にRT-PCR法でⅠ型コラーゲンの発現を解析したところ、miR-143を高発現させた培養糸球体上皮細胞ではⅠ型コラーゲンの発現が増強していた。これらは正常糸球体上皮細胞にTGF-beta1を作用させ た時と同様の形質の変化であった。以上より、糸球体上皮細胞において、TGF-beta1によりmiR-143が発現が増強し、発現増強したmiR-143はTGF-beta1の作用を増強させることにより、糸球体上皮細胞障害障害を引き起こすと考えられた。
|