研究課題/領域番号 |
16K09602
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高瀬 敦 東京大学, 医学部附属病院, 特任講師 (60265684)
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研究分担者 |
菱川 慶一 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任准教授 (50255460)
辻村 太郎 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (90741893)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | DNAメチル化解析 / DNA マイクロアレイ解析 / 腎臓細胞記憶 / Epigenetic Memory / 腎臓由来iPS細胞 / 腎系統分化誘導法 / 腎臓分化誘導因子 |
研究実績の概要 |
申請者らは、iPS細胞を利用した再生医療の実現のため、腎系統分化誘導法の開発とこれまでにない新規腎臓分化誘導因子の同定について研究した。 独自に樹立した腎上皮細胞由来iPS細胞(K-iPS)と線維芽細胞由来iPS細胞(F-iPS)を利用して、そのiPS細胞の特性を解析するために45万以上のメチル化サイトをターゲットとしたゲノムワイドなエピゲノムDNAメチル化解析を行った。更にメチル化解析との相関や腎系統分化誘導細胞での発現解析を確認するため、3万の遺伝子発現をAgilent Expression Arrayで解析し、腎系統分化誘導に影響を与える候補遺伝子を同定した。 結果、iPS化において腎臓細胞記憶遺伝子を検出し、その遺伝子の中でF-iPS細胞において高メチル化遺伝子群48個、低メチル化遺伝子群17個を見出した。その遺伝子発現パターンは低メチル化遺伝子群で優位に一致していた。更に2つの体軸幹細胞系と中間中胚葉系腎系統分化誘導した細胞の発現パターンを相関させるといくつかの候補遺伝子を絞り込む事ができた。またArray解析では、体軸幹細胞系腎系統分化誘導法が腎臓への誘導効率が良く、特にF-iPS 細胞と比べてK-iPS細胞を使った誘導法が最適である事を見出した。 更に、これまで報告されている中間中胚葉因子OSR1と体軸幹細胞因子T (brachyury)の遺伝子解析を行った所、各iPS化におけるメチル化解析との相関はないが、特にK-iPS細胞の腎系統分化誘導での遺伝子Tの発現は強く、遺伝子Tは重要因子と考えられた。 以上の研究成果は、2016年度の日本再生医療学会、日本腎臓学会、アメリカ腎臓学会などで報告している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腎上皮細胞由来iPS細胞と線維芽細胞由来iPS細胞を使って、2つの腎系統分化誘導した細胞の回収に時間を要した。しかし、DNAメチル化解析、マイクロアレイ解析は順調に解析でき、概ね順調に進展しているものと考えます。
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今後の研究の推進方策 |
腎上皮細胞由来iPS細胞、線維芽細胞由来iPS細胞、各iPS細胞における2つの腎系統分化誘導細胞において、DNAメチル化解析、マイクロアレイ解析にて、腎臓細胞記憶遺伝子で新規腎臓分化誘導に関与する遺伝子を見出した。今後は絞り込んだ新規腎臓分化誘導因子をターゲットとして、各iPS細胞へsiRNAやレトロウイルスシステムで強制的にON、OFFすることにより、発生過程に倣わないヒトiPS細胞からの新たな腎臓系統への分化誘導法を検証・開発する。
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