研究課題/領域番号 |
16K09606
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
矢尾板 永信 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (00157950)
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研究分担者 |
吉田 豊 新潟大学, 研究推進機構, 特任専門職員 (40182795)
小谷 典弘 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (90342782)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 腎臓 / ポドサイト / 細胞間接着装置 / 細胞間接着分子 / EMARS |
研究実績の概要 |
腎臓は、糸球体と呼ばれる毛細血管に高い血圧をかけることによって、尿を血液から作り出し、生命維持に貢献している。糸球体の壁にはその高い血圧のために大きな力学的負荷がかかっている。糸球体の最外層を覆っている糸球体上皮細胞(ポドサイト)にも大きな力学的な負荷がかかり、特に病的状態ではそれが増大すると考えられている。その負荷に耐えるため、ポドサイトはアクチンフィラメントを中心とした細胞骨格を発達させているが、この負荷に耐えうるポドサイト同士をつなぐ細胞間接着分子については、全く検討されていない。 本研究では、糸球体構造の維持機構をポドサイトの細胞間接着分子から明らかにしようとしている。Enzyme-Mediated Activation of Radical Sources (EMARS)法は、細胞膜上にある蛋白質に対する抗体を用い、この蛋白質の近傍にある分子群を標識し網羅的に検出する方法である。細胞間接着分子は細胞膜の蛋白質であるため、この方法を応用できる。ポドサイトの細胞間接着分子の一つであるネフリンに対する抗体と単離した糸球体を使い、糸球体表面のポドサイトの細胞間接着分子を中心に同定を試みた。その結果、ネフリンに加え、ポドサイト間接着装置に存在すると報告されているポドシン、ネフ1、Thsd7a、GLEPP1、JAM-A、Crb3を同定した。加えてこれまで報告されていない細胞間接着分子も同定した。これらのことから、EMARS法を単離糸球体に応用する手技が有用であることを実証できた。この過程で見つかってきた問題点は、病的状態ではネフリンの量が減少するため、ネフリンに対する抗体では十分に細胞表面の分子を標識できないことである。これに対処するために、新たにDPP-4に対する抗体が生理的病的状態を通じポドサイト表面を変わらずに標識できることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EMARS法を単離糸球体に応用し、ポドサイトの細胞間接着分子を網羅的に同定できることを明らかにし、またいくつかの報告されていない接着分子も同定できた。これは、申請書に記載した計画とほぼ一致している。
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今後の研究の推進方策 |
病的状態での細胞間接着分子を同定するために、病的状態でもポドサイト表面に存在する分子DPP-4に対する抗体を使ってEMARS法を行う。 培養細胞を使い、より生体内のポドサイトに近い性質を示す培養条件を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験動物を用いた実験が主である。そのため、一回一回の実験を一定の期間内に行う必要があり、その費用もまとまって必要である。次年度使用額が生じた理由は、残った金額が実験には不足しているため、次年度の研究費と合わせて、使用するためである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究計画に沿って、単離糸球体を用いたEMARS法を行い、培養系におけるポドサイトの細胞間接着分子と比較検討する。
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