研究課題/領域番号 |
16K09608
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
原 章規 金沢大学, 医学系, 准教授 (70507045)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 糖尿病性腎症 |
研究実績の概要 |
(1)抗エリスロポエチン(EPO)受容体抗体の新規測定法の構築 前年度に続き、従来のELISAの抗体測定性能の向上に取り組んだ。特に、1)抗原固相化段階、2)1次抗体反応段階および3)二次抗体反応段階の3点の最適化を行った。抗原固相化段階では、固相抗原である可溶性EPO受容体の濃度を従来の5 microgram/mLから、より低濃度の1 microgram/mLとして比較検討したところ、両群間で同等の結果が得られた。これより固相抗原の濃度の低濃度化が可能と判断された。1次抗体反応では、バッファーに10% FBSを加えたものを従来のバッファーと比較した。その結果、バックグラウンドを小さく抑えつつ、陽性サンプルを検出できることが判明した。この際、カットオフ値となる吸光度も0.3と設定できた。健常血清を追加して行った再現性試験では、感度100%、特異度97.6% (40/41)となった。二次抗体反応では、抗体濃度を2,500倍に最終調整した。今後、陽性コントロールを確保することにより、安定かつ高性能のELISA測定系の研究・開発が可能と考えられた。 (2)マウス腎障害モデルにおけるEPO機能の修飾による腎病変の評価 前年度に引き続き、糖尿病モデルマウスに腎虚血再灌流障害を惹起したときのEPO機能について検討した。糖尿病モデルマウスであるAkitaマウスおよび対照マウスであるC57BL/6Jマウスを用いて片腎に虚血再灌流を行った。EPOもしくはカルバミル化EPO群には虚血再灌流30分前に薬剤を皮下投与した。この系において、虚血30分前に放射性ヨードラベルを行ったEPOを皮下投与し、経時的なEPOの体内動態を評価した。虚血再灌流直前と直後では両腎における放射線量に差は見られなかったが、再灌流50分後には障害腎における放射線量が増加することが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)抗EPO受容体抗体の新規測定法の構築 従来のELISAを改良してきた結果、抗体測定性能の維持・向上とともに、測定の低コスト化が可能となることが示唆された。このことは、検討中のELISAが今後の臨床検査キットとして実用化できる見通しがあることを示していると考えられる。今後、陽性コントロールを確保することにより、安定かつ高性能のELISA測定系の研究・開発を進める。以上より、平成29年度に予定していた測定系の構築・改良にかかる研究の進捗は概ね計画通りに進捗していると考える。 (2)マウス腎障害モデルにおけるEPO受容体の発現とEPO機能の修飾による腎病変の評価 疾患モデルの作成:糖尿病モデルマウスを用いて虚血再灌流を起こすことで作成した疾患モデルは安定的に作成できるようになった。この疾患モデルを使用して、アイソトープを用いるEPOの生体内における動態を評価できることも確認された。今後はカルバミル化EPOを投与し、腎病変に及ぼす効果とともに、疾患モデルにおけるEPOの体内動態を評価していく予定である。以上より、本動物実験についても概ね計画通りに進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)改良測定系の評価推進 これまでに構築・改良してきたELISAの基本的性能および品質を評価する。従前のELISAによる測定で結果が判明している血清を用いて、改良後ELISAで得られる結果と比較検討する。これら測定系の評価を推進するため、検体を外部機関に提供し測定依頼することなどについて、すでに学内倫理審査委員会での承認を受け、メーカーとの協働作業を開始した。双方による定期的な打合せを通じて進捗確認を行いながら、必要な追加研究を行う。 (2)マウス腎障害モデルにおけるEPO受容体の発現とEPO機能の修飾による腎病変の評価 生体イメージングを用いた腎局所EPO-EPO受容体の相互作用の評価のため、本学アイソトープ施設における教員にも技術的助言を受けながら、EPOのアイソトープ標識を行っている。今後もアイソトープ施設と連携しながら、カルバミル化EPOのラベリングやSPECT撮影などによる評価についても実践的助言を受ける。腎病変の定量的評価について、炎症性および向線維性の分子群ならびに抗炎症性および抗線維性の分子群に対する抗体やプライマーには、既に当研究室に保管されるものがあるため、それらを活用することにより本研究の効率化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の論文出版に要する費用にかかる海外出版社からの請求書の到着が次年度となる見込みであるため、当該出版費用に相当する助成金が生じた。 このため、次年度には本報告書に記載した内容の研究を引き続き遂行するために必要な研究費を使用するとともに、当該請求書が本学に到着次第、当該出版費用を支出する予定である。
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