研究課題
腎炎の中心的エフェクター細胞である好中球とマクロファージ(Mφ)の炎症部位への導入メカニズムに着目し、接着分子インテグリンとその抑制分子が糸球体腎炎の治療標的になり得るか検討を行った。(1)『糸球体腎炎発症・進展過程におけるMac-1、インテグリン抑制因子PILRαの役割』代表的II型アレルギー疾患である抗腎糸球体基底膜(GBM)抗体型腎炎を、野生型、PILRα欠損マウスで作製した。両群間で、尿蛋白・血清尿素窒素・血清クレアチニンなどの腎機能的解析、フローサイトメトリーを使用した好中球・マクロファージ等の腎局所浸潤の比較検討、腎傷害の組織学的検討、疾患惹起後の腎臓におけるmRNA、タンパクレベルでのサイトカインプロファイリングを行った。また上記腎炎モデル腎糸球体を抗PILRα抗体と抗Ly6B (好中球・単球)、Ly6G抗体(好中球)、CD68(マクロファージ)抗体で蛍光二重染色を行い、炎症糸球体におけるPILRα陽性細胞の検討を行った。尿蛋白・血清尿素窒素・血清クレアチニン値による腎機能評価、糸球体のPAS染色陽性部位半定量的評価の両者において、PILRαノックアウトマウスは、野生型マウスと比較し有意に重篤であった。また同腎傷害は、腎糸球体内外それぞれの好中球・マクロファージ浸潤程度と強く関連しており、サイトカインプロファイリングでも、TNFα、iNOS、IL-6発現がPILRαノックアウトマウスで有意に増加していた。(2)『多光子励起レーザー走査型顕微鏡下での生体内イメージング法を用いた炎症糸球体動態解析』マウス骨髄より好中球を単離。低毒性生細胞蛍光ラベル用キット(CFSE、CMF2HC)で蛍光生細胞染色後に、抗GBM抗体型腎炎野生型マウスに投与し糸球体炎症に関わる白血球挙動を観察する系を確立した。
1: 当初の計画以上に進展している
抗GBM抗体型腎炎をPILRα欠損マウス(PILRα-/-)に惹起し、その表現系を野生型(WT)マウスと比較することができた。本研究で免疫複合体型腎炎モデルにおいて、PILRαノックアウトマウスが野生型マウスと比較し、有意に重篤な障害を認めることが証明された。また組織評価により、腎障害と好中球・マクロファージ浸潤程度が強く関連していることも証明された。PILRαノックアウトマウスにおいては、PILRαによるインテグリン活性化の負の制御が機能しないため、糸球体や間質への白血球導入が促進され、炎症が増強したと考えられた。また多光子励起レーザー走査型顕微鏡で生体マウス腎臓を観察する手法を確立した。本システムを用い糸球体炎症時の白血球動態をリアルタイムで捉えることが可能となった。
レーザー到達深度限界から困難であった多光子励起レーザー走査型顕微鏡での生体腎内観察を可能とするシステムをマウスで開発した。次年度以降、本システムを用い糸球体炎症時の白血球動態をリアルタイムで捉え、白血球により惹起される腎炎発症メカニズム解明を試みる。また『炎症性M1型Mφ、免疫調節性M2型Mφ上に発現するMac-1、PILRαの機能解析』として、糸球体腎炎において重要な役割を果たすと考えられた炎症性M1型Mφ、免疫調節性M2型MφについてMac-1とPILRαの発現・機能、免疫調節性M2型Mφの糸球体腎炎に対する治療効果に及ぼす両分子の役割を明らかにする。
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Am J Pathol.
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Nephrol Dial Transplant
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