研究課題/領域番号 |
16K09611
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
坪井 直毅 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (50566958)
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研究分担者 |
丸山 彰一 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10362253)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 抗腎糸球体基底膜抗体型腎炎 / 白血活性化 / 接着因子抑制 / 好中球 / マクロファージ / 多光子励起レーザー走査型顕微鏡 / アゴニスト / TLR |
研究実績の概要 |
腎炎の中心的エフェクター細胞である好中球とマクロファージ(Mφ)の炎症部位への導入メカニズムに着目し、接着分子インテグリンとその抑制分子が糸球体腎炎の治療標的になり得るか検討を行った。 (1)『糸球体腎炎発症・進展過程におけるMac-1、インテグリン抑制因子PILRαの役割』蛍光顕微鏡によるウサギ抗GBM-IgGおよび二次性マウス抗ウサギIgGのGBM沈着評価では、野生型(WT)、PILRα欠損(PILRα-/-)マウス間で差はみられなかった。病腎糸球体Esterase陽性細胞数および好中球由来ミエロペルオキシダーゼ(MPO)産生はPILRα-/-マウスで有意に増加しており、in Vitroにおける免疫複合体(IC)上での癒着好中球数およびMPO産生でも同様の結果を得た。 (2)『多光子励起レーザー走査型顕微鏡下での生体内イメージング法を用いた炎症糸球体動態解析』WT、PILRα-/-マウス骨髄より好中球を単離。低毒性生細胞蛍光ラベル用キット(CFSE、CMF2HC)で蛍光生細胞染色後に、抗GBM抗体型腎炎野生型マウスに移入し糸球体炎症に関わる白血球挙動を観察し、現在データ解析中である。 (3)『炎症性M1型Mφ、免疫調節性M2型Mφ上に発現するMac-1、PILRαの機能解析』WT、PILRα-/-マウス骨髄由来培養M0型MφをLPS/IFNγでM1型Mφへ誘導後、それぞれをMac-1活性化アゴニストLeukadherin-1(LA1)あるいはVehicleコントロール:DMSOで処理し、LPS刺激を行なったところ、両マウス系統由来MφのM0、M1型形質両者でLPS反応性に有意差はみられず、LA1は炎症性サイトカイン産生を同等に抑制した。 以上より、PILRα欠損による抗GBM抗体型腎炎の悪化は、Mac-1依存性の炎症糸球体への好中球流入数増加に起因すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗GBM抗体型腎炎モデル用いたPILRα-/-マウスフェノタイプの詳細な検討およびIn vitroでの免疫複合体上での好中球活性化評価から、PILRαは免疫複合体に対するMac-1依存性の好中球活性化を抑制する可能性が示された。またMac-1活性化はMφのLPS反応性を低下させることが明らかとなったが、LPS反応性およびMac-1アゴニストによる炎症性サイトカイン抑制効果は野生型、PILRα-/-マウスで有意差はなく、PILRα-/-マウスの病勢悪化に対するMφの関与は否定的であった。多光子励起レーザー走査型生体顕微鏡での腎臓観察では、両マウス好中球移入後に、NTS投与前・投与後30分・60分・90分のタイムポイントで、3分間連続で糸球体を観察することができた (2次元画像で糸球体4-7個/2-3か所/タイムポイント)。
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今後の研究の推進方策 |
抗GBM抗体型腎炎モデルにおいては、本年度まで組織学的に糸球体組織障害を呈する亜急性期において検討してきたが、PILRαは糸球体炎症惹起早期の好中球浸潤に関与している可能性が高く、今後はNTS投与2時間までの短期モデルで糸球体好中球流入の評価を進める。またLA1投与Mac-1活性化に対するPILRαの関与についても、同モデルで検討を進める。また現在繁殖中である、Mac-1、PILRα両分子を欠損した、PILRα-/-Mac-1-/-マウスにおいても、炎症糸球体への好中球浸潤について評価する予定である。また生体病腎観察に関しては、データ取得は終了しており、糸球体内で一瞬でもrollingする条件に至った好中球(min speed 5μm/sec未満になった好中球)の、糸球体内出現好中球数・平均糸球体内滞在時間・糸球体接着好中球数(3分間)、min speed 5μm/sec未満になった好中球平均速度及び5μm/sec未満にならなかった好中球平均速度をH30年度に解析する。
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