研究課題
腎炎の中心的エフェクター細胞である好中球とマクロファージ(Mφ)の炎症部位への導入メカニズムに着目し、接着分子インテグリンとその抑制分子が糸球体腎炎の治療標的になり得るか検討を行った。 (1)『糸球体腎炎発症・進展過程におけるMac-1、インテグリン抑制因子PILRαの役割』PILRα-/-マウスで確認された抗GBM抗体型腎炎の悪化は好中球の糸球体導入数増加に相関するという前年度までの実験結果を得た。そこで疾患惹起時の好中球糸球体導入を観察するため、抗GBM抗体型実験モデルにおける糸球体好中球観察時間を0,2,4時間とし、かつ前免疫あり、前免疫なしの条件に分け、動物実験を行なった。Mac-1アゴニストであるLA1投与野生型マウスでは、前免疫ありの条件下において2時間後に糸球体好中球数の有意な増加をみた。また興味深いことに前免疫なしの条件下では糸球体好中球数にPILRα-/-マウスと野生型マウス間で差は認めなかったのに対し、前免疫によりPILRα-/-マウスは4時間目の糸球体好中球数の有意な増加を示した。 (2)『多光子励起レーザー走査型顕微鏡下での生体内イメージング法を用いた炎症糸球体動態解析』WT、PILRα-/-マウス骨髄より好中球を単離。低毒性生細胞蛍光ラベル用キット(CFSE、CMF2HC)で蛍光生細胞染色後に、前免疫ありの抗GBM抗体型腎炎野生型マウスに移入し糸球体炎症に関わる白血球挙動を観察した。糸球体内好中球停滞時間(dwelling time)はPILRα-/-マウスにおいて長い傾向が見られたが有意差は確認されなかった。原因としては、CMF2HCの蛍光輝度が低く観察しにくい点が挙げられた。(3)『炎症性M1型Mφ、免疫調節性M2型Mφ上に発現するMac-1、PILRαの機能解析』前年度に終了している。本研究成果は論文作成を終え、現在学術誌投稿過程にある。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
Kidney Int.
巻: 95(3) ページ: 680-692
10.1016/j.kint.2018.10.025
診断と治療
巻: 106(4) ページ: 479-483,