研究課題
細胞内蛋白に対する種々の翻訳後修飾は細胞の機能維持に不可欠であるが、ポドサイト機能制御における蛋白翻訳後修飾の役割には不明な点が多い。核内及び細胞内蛋白にN-アセチルグルコサミンが付加されるO-GlcNAc修飾の役割が解明されつつあるがポドサイトにおける役割は不明である。本研究ではO-GlcNAc修飾を制御するO-GlcNAc transferase (OGT)をポドサイト特異的に先天的に欠損するマウス(ポドサイト特異的OGTKOマウス)及びタモキシフェン誘導により後天的に欠損するマウス(タモキシフェン誘導性ポドサイト特異的OGTKOマウス)を作成しポドサイトにおけるO-GlcNAc修飾の役割を検討した。ポドサイト特異的OGTKOマウスは8週齢から尿蛋白が出現し、32週齢では高度尿蛋白を呈し、腎組織ではポドシンの発現量低下や点状化、電子顕微鏡における著しい足突起構造の破綻に代表されるポドサイト障害を示しポドサイト数の減少さえ認めた。一方、タモキシフェン誘導性ポドサイト特異的OGTKOマウスも尿蛋白を示したが、誘導32週での尿蛋白量はポドサイト特異的OGTKOマウスと比べて非常に少なくポドサイト障害の程度も軽微であった。以上よりO-GlcNAc修飾がポドサイト足突起構造及び機能に不可欠であることが明らかとなり、特に出生後のポドサイトの成熟に重要であることが示唆された。また、引き続き近位尿細管特異的OGTKOマウスを作製し現在機能解析を行っている。さらに糖鎖修飾を過剰に起こすためにOGA遺伝子の糸球体上皮細胞特異的欠損マウスならびに尿細管細胞特異的欠損マウスを作製開始する。
2: おおむね順調に進展している
初年度に予定したポドサイトにおけるOGTの機能解析は全て終了し論文公表までいたり、さらに尿細管細胞特異的な機能解析まで順調に進んでいる。
先天的近位尿細管細胞特異的OGT欠損マウス、薬剤誘導性近位尿細管細胞特異的OGT欠損マウスを作製し、近位尿細管細胞におけるO-GlcNAc修飾のloss-of-functionが細胞機能や生命維持に及ぼす影響を検討する。既に先天的欠損マウスが12週齢以降に尿細管細胞における再吸収機能障害を呈する知見が得られている。特にこの点に関し、全ての再吸収機能に影響を及ぼしているのか、メガリン機能、各種分子(グルコース、リン、尿酸、アミノ酸、HCO3-)の中で特異的な機能障害を呈しているのかを解明していく。糖鎖修飾を過剰に起こすためにOGA遺伝子の糸球体上皮細胞特異的欠損マウスならびに尿細管細胞特異的欠損マウスを作製開始する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Nephrol Dial Transplant.
巻: 32 ページ: 1477-1487
10.1093/ndt/gfw463.