研究課題
慢性腎臓病(CKD)の進展因子として、腎局所における脂質代謝異常の役割が重要視されている。腎臓の近位尿細管は脂質代謝と特に関連が深く、その詳細な調節機構の解明は、腎症の発症・進展メカニズムの解明に寄与すると考えられる。その解明の足がかりとして、我々は脂質代謝が大きく変動する絶食時の応答に注目して検討を行った。絶食時には、脂肪細胞分解により生じた遊離脂肪酸が、アルブミンと結合した状態で近位尿細管細胞内へ急速に取り込まれ、一部が脂肪滴として細胞内に貯蔵される。近位尿細管における、絶食時の変化に対応するための調節機構は明らかでない。我々はこれに対応する機構として、細胞内栄養感知機構と言われているO-GlcNAc修飾に着目し、「O-GlcNAc修飾が近位尿細管における脂肪酸代謝調節に関与する」との仮説のもとに以下の検討を行った。近位尿細管特異的Ogt欠損マウス(PTEC Ogt-KOマウス)を作製し、表現型を検討した。PTEC Ogt-KOマウスは、絶食時に各種溶質の尿中排泄の増加、近位尿細管細胞のアポトーシス亢進、脂肪滴蓄積増加、ATP含量の減少が確認された。プロテオーム解析により、Carboxylesterase1(CES1)の発現低下と、その転写因子Farnesoid X Receptor(FXR)の活性低下が関与することを明らかにした。高脂肪食負荷時にも同様の尿細管障害の悪化を認めた。近位尿細管におけるO-GlcNAc修飾は、脂質代謝の恒常性を担っており、その異常が肥満糖尿病状態での腎障害にも寄与していることを明らかにした。
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Journal of the American Society of Nephrology
巻: In press ページ: In press
pii: ASN.2018090950. doi: 10.1681/ASN.2018090950.