オートファジーの抑制因子であるRubiconを近位尿細管特異的にノックアウトしたマウス(以下、ノックアウトマウス)では、当初想定していたオートファジー亢進による腎障害からの臓器保護効果は観察されなかったが、通常食の飼育条件において、野生型マウスと比べて、肥満を呈することがわかった。 このノックアウトマウスは、近位尿細管細胞でのみRubiconがノックアウトされているにもかかわらず、野生型マウスと比べて、皮下脂肪・内臓脂肪の増加ならびに脂肪肝を伴っており、グルコース負荷試験でも耐糖能異常の増悪が確認され、血中のコレステロールも高値であった。また、免疫染色・脂質染色や電子顕微鏡により組織学的に検討したところ、ノックアウトマウスでは、腎臓の近位尿細管細胞において、mTORの亢進やリン脂質を多く含んだリソソームが観察された。 そこで、In vitroにおいてオレイン酸などの脂肪酸を用いた近位尿細管細胞と肝細胞との共培養実験を施行したところ、近位尿細管細胞における脂質取り込みならびに肝細胞への放出の亢進が観察されたことから、ノックアウトマウスが肥満を呈した機序のひとつとして、「近位尿細管細胞における脂質の取り込み→血中への放出」が亢進していることが考えられた。 将来的には、近位尿細管でのオートファジーを介した脂質の制御により、生活習慣病の原因のひとつでもある肥満を改善できる可能性があり、新たな創薬のターゲットになり得ると考えられた。
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