研究課題/領域番号 |
16K09622
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中山 昌明 東北大学, 大学病院, 特任教授 (60217940)
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研究分担者 |
寺脇 博之 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (20277057) [辞退]
渡邉 公雄 東北大学, 大学病院, 医員 (20595607)
林 義満 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (70381382)
朱 万君 福島県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (10607774)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 腹膜透析液 / 生体適合性 / 中皮細胞 / 分子状水素 |
研究実績の概要 |
目的:SDラットを用いてH2含有腹膜透析液の腹膜組織に対する影響を検討した。 方法:SDラットを3群に分け(コントロール:C群、通常PD液群:PD群、H2含有PD液群:H2PD群、各5匹)、一日1回、注射針にて腹腔内に試験液20mL投与した。計10日間投与後、注射実施部位とは反対側の腹膜組織を採取、その一部を各種免疫組織学的検討用にホルマリン固定、さらに採取腹膜組織の一部はトリプシン処理を行い、剥離した表面細胞を収集しそれらのmRNAを抽出・回収した。通常透析液は市販の低ブドウ糖分解物の中性化腹膜透析液を使用した(ブドウ糖濃度2.5%)。H2含有PD液は以下のやり方で作成した。水電気分解にて過飽和H2含有水(水素濃度1000ppb以上)を作成、この中に市販中性PD液を透析液バッグを10時間漬け置きすることで拡散現象により透析バッグ内に水素を付加させた(透析液中のH2濃度:100 ~ 500ppb)。作成したH2含有透析液は1時間以内に実験に用いた。 結果:腹膜組織の肥厚はC群に比較してPD群で増加していたが、H2PD群はC群と比較して違いは無かった。腹膜表面の中皮細胞解析では、単位長あたりの被覆中皮細胞割合はC群と比較してPD群で有意に低下していたが、H2PD群では有意な違いは無かった。腹膜表面細胞の免疫組織染色では、増殖マーカーであるKi67染色陽性細胞数、ならびにアポトーシスマーカーであるM30 CytoDeath染色陽性細胞は、C群と比較して共にPD群で有意に増加していた。しかしながらH2PD群ではいずれも有意な違いは無かった。 考察:現行の中性化透析液でも腹膜組織に対する生体適合性は完全に解決されたわけではなく、中皮細胞の障害・アポトーシスが惹起されることが確認された。一方、H2付加によりそれらの障害は抑制、軽減される可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標であった動物実験によるH2含有透析液の腹膜保護効果をおおむね確認する事が出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究目標として、初年度に実施した動物実験のmRNA発現(アポトーシス関連)への影響などさらに詳細な解析を進める。さらに、腎不全そのものが腹膜組織障害に影響を与えることが臨床的に確認されていることを踏まえ、今後の予定として、腎障害(不全)モデルラットを作成し、これに対する透析液の腹膜組織に対する影響を確認するための検討を行う。このモデルでH2含有液が通常のPD液と比較して腹膜障害程度を抑制することが示すことができれば、臨床検討を行うためのH2含有PD液作成機器のプロトタイプ作製を予定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
分担研究者一名に分担金を執行できなかったため、分担金5万円が繰り越しされた。
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次年度使用額の使用計画 |
分担金5万円分を29年度に配分する予定である。
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