研究課題/領域番号 |
16K09623
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
草場 哲郎 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60367365)
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研究分担者 |
上 大介 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80415588) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | CRISPR/Cas9 / 腎臓 / in vivo gene editing |
研究実績の概要 |
本研究では、新規遺伝子改変方法であるCRISPR/Cas9システムに従来のCre-LoxPシステムを組み合わせることにより、成体の腎臓で後天的かつ組織特異的に複数遺伝子の改変を行う方法の確立を目的として計画された。当初計画していた昨年度の研究計画では腎臓にtdTomatoおよびCas9を発現しているマウスにtdTomatoに対するgRNAを投与し、遺伝子改変を誘導する予定であった。前年までのVitroでの研究において、tdTomatoレポーターに対するgRNAの作成は終了している。また遺伝子改変動物も交配を重ね、完成している。 今年度経過であるが、Vivoの実験では腎尿細管にtdTomatoとCas9を発現するマウスを得たが、gRNAの投与のみではtdTomatoの発現の消失を認めず、遺伝子改変を誘導することができなかった。その理由としてgRNAの細胞内への導入効率が低いこと、導入されたgRNAが長期間細胞内で残存しないこと、結果として遺伝子改変のために必要な十分な量のgRNAを細胞内で維持できないことが考えられた。 上記の問題を解決するために、gRNAの導入にアデノ随伴ウイルスを用いることとした。また遺伝子導入効率も低いことが予想されることから、少数の細胞での遺伝子改変をより可視化するためにがん抑制遺伝子であるLkb1、p53を機能消失させ、癌促進遺伝子であるKRASを持続活性化することで発癌を誘導する遺伝子改変を行うこととした。実験方法の変更を行った結果、腎内に遺伝子改変に由来すると考えられる異型細胞の集簇を複数認め、今後この細胞群がCRISPR/Cas9により遺伝子改変された結果によるものか、そしてその細胞の由来に関する検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
In Vitroの研究は達成されており、平成29年度の研究計画ではVivoの実験を中心に行う予定であった。まず近位尿細管上皮特異的Tamoxifen誘導性Cre発現遺伝子、Cre依存性Cas9発現遺伝子、Cre依存性tdTomato発現遺伝子の3つの遺伝子変異を有する改変マウスを作成し、Tamoxifenの投与を行ったところCas9蛋白、tdTomato蛋白とも発現を認めた。そこで当初予定していたように、tdTomatoに対するgRNA(1nmol)とマイクロバブルの混合液を下大静脈より投与し、その直後に右腎に超音波プローベを押し当て1分間の超音波照射を行い、gRNAが効率的に細胞内に取り込まれるように誘導した。しかしながらgRNAは一旦細胞内に取り込まれたが、遺伝子改変を誘導することはできなかった。理由として、取り込まれたRNAが長時間細胞内に存在しないこと、そしてCRISPR/Cas9システムが作動する十分なgRNAの量を細胞内に取り込めないことが考えられた。 そこでgRNAのdeliveryする方法として、アデノ随伴ウィルス(AAV)を用いることとした。そして発現しているtdTomatoレポーターを消失させるよりも、少数の細胞でも遺伝子改変されれば可視化できるように、癌を誘導する遺伝子改変を行うことに計画を変更した。 既報にあるように、がん抑制遺伝子であるLkb1、p53を機能消失させ、癌促進遺伝子であるKRASを持続活性化するようなAAVを作成し、腎盂内投与を行った。標的遺伝子が改変され腫瘍を形成するのに時間が必要と考えられたため、投与後5ヶ月待機した結果、腎組織内に複数の異型細胞の集簇を認め、In vivoでCRISPR/Cas9システムにより遺伝子が改変されたものと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
今回、腎組織内で認められた異型細胞の集簇がCRISPR/Cas9により遺伝子改変されたものであることを確認する必要がある。そこで採取した腎組織において異型細胞の集簇を認める部位をLaser microdissectionにより組織を採取し、そこからDNAを抽出する。そのDNAを用いて、予想される遺伝子改変部位を含むPCRを行い、そのPCR産物に対してT7エンドヌクレアーゼアッセイを行い、CRISPR/Cas9により遺伝子改変が生じミスマッチ偏位を認めるかどうかを確認する。もし遺伝子改変を認めれば、シーケンス解析によりどのような遺伝子改変が行われているか、3つの遺伝子改変頻度を確認する。 また異型細胞の細胞由来を同定するために、CytokeratinやVimentinに対する免疫染色を行い検討する予定である。そして異型細胞では活発な細胞増殖が行われていると考えられるため、Ki67の免疫染色により増殖能を評価予定としている。
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