平成29年後は、動物の飼育ケージの問題で平成28年度に実施できなかった腎亜全摘モデルを用いた検討を行った。 In vivoの実験では、腎臓亜摘出群と腎臓亜摘出にクロト蛋白(30μg/kg/day)を補充する群の比較検討を行った。腎亜全摘は高血圧やアルブミン尿の増加を呈し腎に線維化を来すが、クロト蛋白の補充は血圧を是正しアルブミン尿を減少させ、線維化を抑制した。クロト補充が腎内アンジオテンシン濃度を下げ、糸球体のTRPC6の過剰発現を是正することが高血圧やアルブミン尿の改善につながったものと考えられた。 また、以前から線維化についてはクロトがTGFβの受容体阻害をすることが関係しているとされている。実際、腎亜線摘ではSmad3のリン酸化に加えて、SnailやSMAなどの上皮間葉遷移に関する遺伝子発現が亢進しており、これらTGFβの下流に属する反応はクロト蛋白補充で軽減した。今回、我々はクロト蛋白補充が内因性クロト発現に加えて骨形成因子7(BMP7)の発現を亢進させることを見出した。BMP7はよく知られた抗腎線維化因子である。今回の結果から、クロトがBMP7を誘導することが腎線維化抑制の新たな機序として考えられた。 in vitroの実験としては、培養糸球体上皮細胞を用いてTRPC6発現に対するインスリン様成長因子(IGF)とクロト蛋白の相互作用を検討した。IGFは糸球体上皮のTRPC6発現を増加させるが、クロト蛋白はIGFのTRPC6に対する作用に拮抗した。
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