研究課題
IgA腎症は,わが国に高頻度に認める慢性糸球体腎炎である。患者血液中に糖鎖異常IgA1を含む免疫複合体が形成され,腎糸球体メサンギウム領域に沈着し炎症を惹起すると考えられる。その血液中IgA免疫複合体の分子量は70万Da以上であり,IgA1はその他のタンパク質と結合していると考えられるが,その詳細な構造は明らかではない。そこで本研究は,高分解能質量分析計を用い,①血液中のIgA免疫複合体に含まれるタンパク質の同定・定量,②同定されたタンパク質・IgA1複合体の糸球体からの検出・定量を行い,IgA免疫複合体の沈着機序の解明を目指す。さらに,③血液中あるいは尿中のIgA免疫複合体の検出・定量方法を確立し,①-③を,新たな非侵襲的診断方法の開発につなげることを目的とする。H28年度は,①血液中のIgA免疫複合体に含まれるタンパク質の同定・定量に関して,IgA腎症(n=10),健常者(n=8)の血清より,affinity purificationにてIgA及びIgA結合タンパク質を分離。Orbitrap Fusion ETDにて,IgA1ヒンジ部O結合型糖鎖解析と,タンパク質の同定・定量を行ったところ,IgA腎症の血清IgAは健常者のIgAよりも特定のタンパク質において有意な相互作用を持つことが,定量的に明らかとなった。さらに,②同定されたタンパク質・IgA1複合体の糸球体からの検出・定量に関して,実際のヒト腎組織を用いた解析プロトコールの作成が進んでいる。①,②よりIgA腎症特異的なIgA免疫複合体構成タンパク質を同定し,そのタンパク質をターゲットとした新たな検出法の確立を目指す。
2: おおむね順調に進展している
IgA腎症患者50名,健常者50名よりIgA及びIgA関連タンパク質の精製は終了し,現在IgA糖鎖解析並びに免疫複合体構成タンパク質の定量的な同定が進行中である。また,腎生検組織のIgA免疫複合体の解析に向けて,ヒト腎組織を用いた解析プロトコールの作成が進んでいる。
IgA腎症患者50名,健常者50名のIgA糖鎖解析並びに免疫複合体構成タンパク質の定量的な同定を行う。患者よりIgA免疫複合体を分離し,IgA糖鎖解析並びに免疫複合体構成タンパク質の定量的な同定を行う予定である。IgA腎症患者の腎生検組織を用い,糸球体沈着IgA免疫複合体の詳細なプロテオーム解析を行う予定である。これら解析からターゲットとなるIgA腎症特異的なIgA免疫複合体構成タンパク質を検出する新たな診断法を作成する予定である。
サンプル解析に要する実験消耗品が想定より安価に購入できたため。
研究は概ね順調に進んでいる。引き続き、血清IgA-ICの分離精製、タンパク質の同定・定量を行うための試薬、研究消耗品を購入する。また、研究情報の収集、分析のため腎疾患の治療法開発・向上を目的とした会議に出席するための旅費に使用する予定である。
これまでの研究成果を踏まえ更新を予定している
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件)
PLoS One
巻: 11 ページ: e0163085
10.1371/journal.pone.0163085
http://fujita-jin.blogat.jp/blog/2013/02/iga-f52d.html