研究課題/領域番号 |
16K09640
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀田 晶子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20534895)
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研究分担者 |
中村 元信 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40459524)
山崎 修 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (80757229)
鈴木 正志 東京学芸大学, 学内共同利用施設等, 教授 (90595662)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 近位尿細管 / 高血圧 / WNK / Na輸送 |
研究実績の概要 |
H28年度は主に近位尿細管(PT)のNa輸送活性化に関わる各輸送体,情報伝達系等の要素が,With-No-Lysine kinase 1(WNK1)およびWNK1関連経路の構成因子を阻害することによりどのように影響を受けるかを検索し,WNK1/OSR1/SPAK系路は,PTのNa輸送調節における異なるシグナル経路を統合調節するMaster Regulatorである可能性を見出した。 H29年度はWNK1の下流シグナルにおけるSPAKとOSR1各々の意義を検討した。Wistarラットおよびヒト腎癌症例から単離したPTにおいて、蛍光色素を用いた細胞内pH測定により同定した管腔側Na/H交換輸送体(NHE3)と基底側Na/HCO3共輸送体(NBCe1)活性を指標として解析した。OSR1/SPAK阻害剤Closantelは、ラットとヒトPTにおけるインスリン(Ins)、チアゾリジン(TZD)、アジオテンシンII(AngII)のNHE3/NBCe1の輸送活性亢進作用をほぼ完全に抑制した。また腎皮質においてはこれら刺激因子によるOSR1/SPAKリン酸化亢進作用を抑制したが、Akt/ERKリン酸化には影響を与えなかった。一方、組織培養液でovernight培養したラットPTにおいて、InsとTZDのNBCe1活性亢進作用はanti-WNK1とanti-OSR1 siRNAにより完全に抑制されたが、anti-SPAK siRNAには影響を受けなかった。また特異的抗体による免疫組織染色ではOSR1のラットおよびヒトPT発現を確認した。 以上より、PT Na輸送調節においてはWNK1/OSR1経路がIns/Akt、TZD/PPARgamma/ERK、AngII/NO/ERKなど異なる刺激経路を収斂することが示され、新規降圧療法の標的となる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
*これまでに,AngIIのPT Na輸送亢進作用がWNK1依存性を示すこと,またAngIIのPT NBCe1刺激作用,NHE3刺激作用がOSR1/SPAK阻害剤Closantelによりほぼ完全に阻害され,いずれもOSR1/SPAK依存性を示すことが,ラットおよびヒトにおいて示された。すなわち,WNK1が種を超えてPTのNa輸送のMaster regulatorである可能性がさらに強くなったと考えられる。 *OSR1とSPAKのいずれが主要な役割を果たすかについても今回検索を行い,OSR1がWNK1の下流シグナルにおいて主要な役割を果たすことが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
他のWNK1アイソフォーム,WNK3・WNK4の関与についても,WNK1と同様の手法で,すなわちsiRNAによる遺伝子発現制御処理ののちNBCe1・NHE活性測定および上流・下流の調節系の詳細について解析を進める予定である。 また,Xenopus oocytes発現系を用いて,IRBIT/NHE3経路におけるWNK1の意義についても検索を進める予定である。
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