本研究の目的は透析の患者情報や施設情報を、地域の人的・金銭的負担をかけずに共有する災害対応型地域連携医療情報システムを設計し、実証システムを構築・検証することにある。 平成31年度は平成30年度に構築した検証システムにより試験運用を継続した。各施設の透析情報システムより、血液透析実施毎に匿名化された透析関連記録が自動的に検証システムサーバーに送信、蓄積される。システム間連携はSS-MIX2による情報の標準化を活用し、開発は最小限で実装された。研究者自身は研究開始時に所属していた大学病院を離れ、一般病院に移ったため新たな研究は困難であったが、研究者自身により開発した検証システムは、大学院内に構築したシステム、クラウド上に構築したシステム、いずれも引き続きおおむね安定稼働した。 プロトタイプの構築と実際の医療現場での運用を通じて、透析患者での地域医療情報連携システムを実現するための障害と課題を明らかにした。平時と災害時に真に必要な情報に絞ることで、安全性とコストの両立を図りつつ、現場のニーズを充足しうる地域連携透析情報システムを構築できると考えている。地域連携医療情報システムの普及は災害医療はもとより、平時の医療連携の促進により医療の均てん化や医療費の効率的利用にも貢献すると期待される。また、透析情報の標準化や正規化が進めば、正確で高密度な患者情報の共有、情報収集時間の短縮、重複検査の防止等、医療関係者と患者双方に便益が期待できる。
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