研究課題
(1) 慢性腎臓病における塩分感受性の発症と進展に関わるWNKシグナルの役割を解明するため、マウスCKDモデルとしてアリストロキア酸腎症(AAN)を用いて、高塩食摂取による血圧変化と WNKシグナル系分子の発現量を評価した。その結果、AANマウスは塩分感受性亢進を示し、腎臓におけるWNK1の蛋白発現亢進とSPAK/NCCのリン酸化亢進が認められた。高塩食負荷によってもWNK1-SPAK-NCCシグナルカスケードは抑制されず、塩分感受性亢進の原因と考えられた。SPAKノックアウトマウスではAANによるWNK1増加はあるもののリン酸化NCCの増加は認めなかった。これらの結果からWNK1-SPAK-NCCシグナルの過剰な亢進がCKDの塩分感受性亢進に関与すると考えられた。(2) Na-K-Cl共輸送体(NKCC)1は骨格筋形成を制御し,その阻害剤ループ利尿薬が筋再生を抑制しサルコペニア発症に関与する。当該年度において、さらにWNK1がSPAK,OSR1非依存性に長寿遺伝子forkhead box O (FOXO) 4を介し筋肥大を正に制御することを示した。まず、マウス骨格筋細胞C2C12,マウス骨格筋組織のWNK1は、それぞれ分化誘導、長期運動刺激によりタンパク発現量が増加した。C2C12細胞でsiRNAによるWNK1ノックダウンを行うと、筋管細胞径の萎縮ならびに筋萎縮関連遺伝子(atrogene)の転写増加を認めた.Atrogeneの主たる転写因子FOXO1/3a/4の核内局在を評価すると,siWNK1によりFOXO4の核内発現が増加しており,siFOXO4を同時に行うと筋管細胞萎縮とatrogene転写増加がキャンセルされた。WNK1-FOXO4シグナルは生理的に筋肥大を制御し,筋腎連関メカニズムの一端を担うシグナルとして新しい治療標的となる可能性があることが示唆された。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 5件) 備考 (2件)
Kidney International
巻: 95 ページ: 123-137
10.1016/j.kint.2018.08.030
Nature Communications
巻: 9 ページ: 1411
10.1038/s41467-018-03771-2
Clinical and Experimental Nephrology
巻: 22 ページ: 1251-1257
10.1007/s10157-018-1593-z
Scientific Reports
巻: 8 ページ: 9101
10.1038/s41598-018-27414-0
http://tmd-kid.jp/wp-content/uploads/2019/04/20180413_1-Ando.pdf
http://tmd-kid.jp/wp-content/uploads/2019/04/20181116_1-Kikuchi.pdf