研究課題/領域番号 |
16K09643
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
大蔵 隆文 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (40260385)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | インターロイキン18 / NaCl co-transporter / 高血圧 |
研究実績の概要 |
高血圧患者では、インターロイキン(IL)-6、IL-18やtumor necrosis factor-aなどの炎症性サイトカインの上昇が認められ、これに伴い惹起される慢性炎症によって内皮機能障害、動脈硬化などが進行し、さらなる血圧上昇をきたす。私たちはアルドステロン食塩負荷高血圧モデルにおいて、IL-18欠損マウスでは野生型マウスと比較して、血圧上昇が軽度であることを見出した。最近、NaCl co-transporter (NCC)がIL-18の受容体の1つであることが報告されている。 本研究では、まずIL-18そのものに血圧上昇作用があるかを確認するため、野生型マウスに食塩負荷+recombinant IL-18 (0.5mg/day 腹腔内投与)を投与する群と非投与群で血圧を検討した。その結果、recombinant IL-18投与によって血圧は約30mmHg上昇した。この上昇の原因として、IL-18によるNCC発現の増加の可能性を考え、腎臓におけるNCC発現を免疫染色法により比較したが、両者で差を認めなかった。また、マウス遠位尿細管細胞(mDCT)にrecombinant IL-18を添加し、NCCの遺伝子発現をPCR法、そのタンパク発現をWestern blot法により検討したが、明らかな上昇は認められなかった。以上の結果から、IL-18は少なくとも尿細管細胞にNCCの発現を誘導することで、ナトリウムの吸収を増加させ、血圧を上昇させる機序は否定的であった。したがって、今後はNCCのリン酸化やそのほかのナトリウムチャネルの関与の有無、炎症惹起による酸化ストレスなどの関与を検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ、IL-18投与により血圧上昇が確認されたため、今後はその機序の解明に取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
様々なサイトカインがNCCだけではなく、インテーフェロンγやIL-17などがNa+/H+ exchangerの発現、IL-6などがepithelial Na+ channelの発現、IL-1などがNa-K-Cl cotransporterの発現に影響を与えることが報告されている。このため、まずはIL-18投与によって、尿中ナトリウムの減少が観察されるか、メタボリックゲージを用いて、一日尿を採取し、IL-18投与群と非投与群で比較検討する。もし、尿中ナトリウム排泄に差が認められた場合は、それぞれのチャネルにおけるIL-18の関与を調べる予定である。特にNCCに関しては、IL-18の添加にによるリン酸化の有無も検討する予定である。 さらに腎臓に依存しない血圧上昇機序も考えられるため、酸化ストレス(NADPH oxidase)活性化の検討も行う。NADPHの構成分子であるp47phox、p67phox、gp91phoxの遺伝子発現をRT-PCR法によって、それぞれの蛋白発現はそれぞれの特異的抗体を用いてWesternブロット法によって測定する。そしていかなるIL-18シグナルカスケードがNCCの活性化、酸化ストレスの惹起に関連しているかをNF-kB、PI3キナーゼ、Akt、AP-1、p38それぞれの抗体・リン酸化抗体を用いて、Westernブロット法によって活性化の有無を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
1000円未満の額であり、次年度に繰り越して、有益に使うため。
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次年度使用額の使用計画 |
1000円未満の額であるため、次年度に繰り越し、次年度の金額と合計することで、より必要な物品を購入する。
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