研究課題/領域番号 |
16K09645
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
後藤 健一 九州大学, 大学病院, 助教 (30549887)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 内皮由来過分極 / 血管内皮機能障害 / TRPV4チャネル / カルシウム活性化カリウムチャネル / 高血圧 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、高血圧における血管内皮依存性過分極(EDH)の障害がTRPV4あるいはS/IKCaの異常に起因するとの仮説を立て、20週齢の脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(SHRSP: stroke-prone spontaneously hypertensive rat)と同週齢のWistar-Kyoto(WKY)ラットより単離摘出した上腸間膜動脈を用いて検討した。WKYの腸間膜動脈において、EDHを介した反応は、S/IKCaの阻害薬(apamin+TRAM-34)により著明に抑制され、さらにTRPV4の選択的阻害薬であるRN-1734およびHC-067047によって減弱した。SHRSPの腸間膜動脈において、EDHを介した過分極・弛緩反応はWKYに比べて有意に減弱していた。TRPV4の選択的活性化薬であるGSK1016790Aは、WKYの腸間膜動脈において用量依存性に過分極・弛緩反応を引き起こしたが、SHRSPの腸間膜動脈においては、わずかな過分極を惹起するものの、弛緩反応は消失していた。SKCaの選択的活性化薬であるCyPPAによる過分極・弛緩反応は、WKYの腸間膜動脈と比較してSHRSPの腸間膜動脈において減弱していたが、減弱の程度は軽度であった。WKYの腸間膜動脈に比べ、SHRSPの腸間膜動脈では血管内皮のTRPV4とSKCaの蛋白発現は有意に低下していた。一方、SHRSPの腸間膜動脈において、IKCaの機能と発現は保たれていた。これらの結果から、SHRSPの上腸間膜動脈においては、血管内皮におけるTRPV4とSKCaの発現低下がEDHを介した反応の障害に関与している可能性が示唆された。以上の研究結果は、Hypertension誌(Seki T, Goto K et al. Hypertension 69:143-153, 2017)に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、SHRSPの腸間膜動脈におけるEDH反応の障害に、EDHの標的イオンチャネルであるTRPV4およびSKCaチャネルの発現低下が関与していることが示された。おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の実験により、SHRSPの腸間膜動脈におけるEDH反応の障害にEDHの標的イオンチャネルであるTRPV4およびSKCaチャネルの発現低下が関与していることが示唆された。平成29年度以降は、高血圧病態下でTRPV4およびSKCaチャネルの発現低下がおこる機序について検討を進めていく。炎症性サイトカインがEDHの標的イオンチャネルのダウンレギュレーションを惹起するとの仮説を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学の研究棟改築工事に伴い、年度末に研究棟移転となった。このため、当初、年度末に予定していた実験を行うことができなくなったため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については、実験動物購入や試薬、実験機材等の物品費に充てる予定としている。
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