研究実績の概要 |
本研究では、「高血圧に伴うEDHF反応の減弱は、炎症性サイトカインによるEDHFの標的 イオンチャネルのダウンレギュレーションに起因する」との仮説を検証した。脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)の摘出腸間膜動脈を用いて、高血圧に伴うEDHF反応の障害が、EDHFの標的イオンチャネル(TRPV4, SKCa, IKCa)の機能や発現の低下に起因するかを、微小電極法、等尺性収縮法を用いた生理・薬理学的実験および分子生物学的実験により検証した。さらに、EDHFの標的イオンチャネルの機能や発現低下に、炎症性サ イトカインが関与している可能性について検討を行った。本研究によりWKYの腸間膜動脈においてTRPV4-S/IKCaの活性化がEDHの発生に関与していること、SHRSPの腸間膜動脈におけるEDHの障害は血管内皮細胞におけるTRPV4チャネルおよびSKCaチャネルの発現低下に起因することが明らかとなった。一方、炎症性サイトカインであるインターロイキン1β、 インターロイキン6、TNF-αの血中濃度はWKYおよびSHRSPいずれも市販の測定キットの感度以下であり、仮説を検証することはできなかった。以上の研究成果はHypertension誌(Seki T, Goto K et al. Hypertension 69:143-153,2017)に掲載され、同論文は第40回日本高血圧学会総会においてYoung investigator awardを受賞した。また高血圧とEDHの関連に関して、本研究成果を含む英文総説論文として報告した(Goto K et al. Int J Mol Sci. 2018;19:E315.)。
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