研究実績の概要 |
厚生労働省の定める先進医療Bとして実施する「正コレステロール血症を呈する従来治療抵抗性閉塞性動脈硬化症に対するデキストラン硫酸カラムを用いたLDLアフェレシス療法」についての,有効性の有無および安全性について多施設共同前向き試験にて症例登録を行い、同療法の分子的作用機序の解明を目指してすでに研究を展開している動脈硬化増悪因子受容体への直接結合因子(ATRAP)に着目した検討を行った。具体的には本療法を受ける患者の血球成分(単球・白血球)検体を用いて検討し、正コレステロール血症を呈する従来治療抵抗性閉塞性動脈硬化症の病態、および本療法の臨床的治療効果とATRAP遺伝子の発現レベルとの関連性等について解析した。 まず基礎的検討として、現在のところ既に効果が認められ保険適応とされている脂質異常症を有する従来治療抵抗性閉塞性動脈硬化症に対するデキストラン硫酸カラムを用いたLDLアフェレシス療法における分子的作用機序を検討することを目的とし、ATRAPが病的刺激の持続によるAT1受容体下流の臓器障害と関連した情報伝達系の過剰活性化に対して選択的な抑制作用を発揮することに着目した。疾患モデルマウスとしてCre/loxPシステムを用いてATRAPの組織特異的発現抑制マウスの作製し高度な動脈硬化をきたす病的刺激条件下における検討を行い成果を論文発表している(Int J Mol Sci. 21;18(3), 2017)。また動脈硬化性疾患に罹患した患者の臨床評価指標および血球成分(白血球)検体を用いて、Real-time RT-PCR法によるヒトATRAP遺伝子の発現解析の検討もあわせて行い、動脈硬化性疾患指標とATRAP遺伝子の発現レベルとの関連性について重要な知見を明らかにし、論文発表した(Atherosclerosis. 269:236-244, 2018)。
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